香港国際学園 56
一触即発の雰囲気のなか誠一が図書室から出てきた。
「そんな事を思っていたのか…」
寂しそうに呟いた。
「…なら勝負だ、どちらが能力者として上かはっきりさせよう」
「望む所だ」
二人が対峙した時だった
「アホガキ共が、テメエ等みてぇなガキが一丁前に殺気なんか出してんじゃねぇよ」
振り向くとボロボロのマントを身に纏った鋭い目つきの白髪の青年が立っていた。
「ボケナスに言われてガキの子守に来てみれば案の定、どっちが上かなんぞ低次元な喧嘩してやがる」
そう言うとため息を吐いた。
「どこの誰だか知らねぇが男同士の喧嘩に口挟むんじゃねぇ!!」
要が叫んだ。
「ガキが粋がるんじゃねぇ!!殺すぞ!!」
要の気迫をあっさりと吹き飛ばした。
「そんなに勝負してぇんならこの『九十九文冶』様が相手になってやる!!かかってこいクソガキ!!」
そう言われるや否や『加速』の能力全開で文冶に突っ込んだ。
常人には要のスピードは速すぎて目で追うことも出来ない。
「(俺はあいつ等とは違う!!)」
一瞬で文冶の背後に回り込んだ。
「(とった)」
そう思った時だった。
「アホ、もう終わってる」
文冶が呟くと同時に意識が途切れた。
「みぞおちに五発、脆いな。刀抜くまでもねぇ」
そう言い背中に負った包丁のような刀を見た。
腹にとてつもない衝撃が走る。
目の前が暗くなった。
何だ?意識が遠のいているのか?
バカな。俺は六錠要だぞ?ふざけるな。
立て。
踏みとどまれ。
お前は、自分が誰だか分かっているのか?
六錠要だぞ。
「があああっ!」意地。もしくはプライドだろうか。要は立った。
一瞬気を失い、気力で意識を取り戻す。
覚醒とも呼べる、その瞬間を目にした者で驚いた者はいなかった。
九十九を除いては、だか。
「俺は、六錠、要だ」
気高いな。九十九の感想だ。
「お前は何を望むんだ?」
「強さだな」
要の眼には強さがあった。今さっきまでは無かった強さだ。
こいつはとんだ拾い物だな。
感情が高まっているときに、誰かに圧倒的に打ち負かされる。そうしてより強い意志が、強くなりたいという意志が、要の中に現れたのだ。
「俺に附いて来い。お前の望む力をやろう」