香港国際学園 41
「あ」
思い出した。以前抗戦した新田 善と言う風紀委員だ。どうやら彼は自分を捕まえたいらしい。
逃げよう。才英がそう思った時に、「待って!」
斬悟が叫んだ。
「僕は君を勧誘しに来たんだ」
何に?と聞く前に斬悟は言った。
「僕は君を風紀委員に勧誘したい!」
「は?」
とっさに返す言葉を掴まえる事が出来ず、才英は情けなく開いた口から、短くそう音が漏れる
「はっきりいって今の生徒会は…」突然、斬吾が小声になる。…ふわっ…才英の背中に柔らかい体重と体温が感じられた。悠里だ。「ナニ話してるか男同士で?」気配も感じさせず、文字通り背後霊の様に現れた悠里に驚愕する二人(才英はもう慣れていた)。「わかったオマエらホモか?」「は?」「駄目、才英はあげない!」
少したじろいだ斬悟だが、気を取り直して才英に言った。
「実は桐生さんから風紀委員も武器を購入している顧客ですので、損な話ではないと思いますが」
斬悟の言葉に才英は悠里の方を見て問い掛ける。
「ほんとなの?」
「ああ、確かに生徒会周辺は大口の顧客だが・・・だからと言ってホモを認めるわけにはいかないね・・・」
才英は悠里のピントのずれた発言に慣れてきたが、不慣れな風紀委員の2人は戸惑っていた。
「今日の所はこの辺りで・・・いい返事を待ってます・・・」
少し気まずい空気に斬悟は話を切り上げ、新田善を引っ張るようにこの場を去ったのだ。
立て続けの襲撃者に疲れた才英は、溜息をつきながら寮へと引き上げた。
その途中に人影・・・黄色ジャージの女、久遠眞澄だった。
真澄は潤んだ目で才英を見つめ、こう言ったのだ。
「アタイ決めた!・・・アタイはアンタの女になるっ!!」
「・・・はぁ?・・・」
予想外の言葉に唖然とする才英。
しかし、才英の後ろにいた悠里が、後ろから才英を抱きしめて眞澄を見る。
「駄目・・・才英は私の物・・・」
相変わらず無表情だが、心なしか普段より怒っているように感じる。
だが、眞澄もそんな事で怯む訳も無く、才英に身体をぴったりとくっつけると、上目遣いに潤んだ目を向ける。
「別にアンタに本命がいたってかまわない・・・アタイ・・・愛人でも、奴隷でも、性処理の道具でも・・・アンタの傍においてくれたら・・・」
そう言った眞澄が悠里の方を見る・・・2人の視線の間に走った火花が才英には見えた気がした。
しかし・・・(背中に当たる悠里のオッパイの感触が・・・しかし、眞澄も意外と大きい・・・じゃなくてっ!・・・2人の視線が・・・怖すぎるっ!)
役得と言うのか・・・災難と言うのか・・・女にモテる事の無かった才英にとって、もはや処理能力の超えた事態であった。