学園の牝 23
しかし敬一が驚いたのは、そんなことではない。
2人が絡み合っていることに驚いているのだ。
少子化が深刻な社会問題となっている昨今、ゲイやレズなどのいわゆる同性愛者は非常に肩身の狭い思いをしている。
そんなところを見られようものなら、たちまち問題児扱いされて特別教室行きとなる。
それは肉便器とて例外ではないはずだ。それなのに・・・!
「なっ・・・何やってんだ、おまえら!」
2人が何をやっているか理解した瞬間、敬一はそんなセリフを口にしてしまっていた。
「!!」
敬一の声に、2人は弾かれたように敬一を見る。
その顔には禁忌を犯したことを知られた恐怖と絶望がありありと浮かんでいた。
「あ・・・あ・・・」
「もっ、申し訳ございませんっ!」
呆然とする妹の亜以より一瞬早く立ち直った姉の由宇が、すばやくその場に土下座する。
手足が縛られているというのに、実に見事な土下座であった。
「こっ、これは全て私の・・・!
そう、愚かな私が勝手にやったことでございます!
妹の亜以は何も関係ございません!
何卒・・・!何卒、妹だけはご容赦を・・・!」
「なっ・・・」
突然土下座したかと思えば、いきなり片割れの命乞いをされて言葉を失う敬一。
しかし事態はそこでは留まらない。
「いっ・・・いいえ!悪いのはこの私!この私でございます!
どっ、どんな罰でも受け入れます!
ですから・・・ですから!」
自分の罪を被ろうとする姉を見て、今度は亜以が罪を被ろうとし始めたのだ。
困ったのは敬一である。
敬一は2人を見て、反射的に声を出してしまっただけなのに。
これではまるで敬一が悪者のようではないか。
・・・・・・・・・。
しばしの、沈黙。
敬一はため息を1つ吐くと、2人に声をかけた。
「あー・・・。その、何だ。安心しろ。
別にチクったりしやしねえから」
「え・・・?」
敬一の言葉があまりにも意外だったらしい。
亜以がきょとんとした表情でこちらを見ている。
一方の由宇は、それで表情を崩す気配はない。
同じ顔をしていても、由宇のほうがしっかりしているようだ。
「・・・それでは何をすればよろしいでしょう?」
「由宇!?」
案の定、脅迫か何かと勘違いしている。
敬一は困った。
別に告げ口する気もないのに、相手は何かを要求してくると思い込んでいる。