香港国際学園 131
「まあ、はじめに理事会についてわかったことを話すと、ロック・ワーズワースが理事会でもけっこう高い地位にいるってことかなあ」「ワーズワースって先生たちをまとめてるわけだから、主姫派なんじゃないの?」「理事会と深く関わっていると考えると、その逆と考える方が正しいかもね…」「この混乱の発端にはワーズワースも絡んでいると?」「それは飛躍しすぎじゃあないかな?誠ちゃん…ワーズワースは能力者じゃないわけだし、理事会も何やら、ややこしい集団みたいだねえ…陸と姫ちゃんはアドルフのことでピリピリしてるしさあ」
「そのアドルフのことなんやけど、公元家がスポンサーになってる施設で、数年前まで調整がなされていたんやって…」「橘家や、鈴木家の異端者も絡んでいるらしいよ…これは陸も姫ちゃんも知っていることなんだけどね…」
「ちょっと待って、一族を裏切れば、直ぐにわかるはずなんだけど…」「だから、公元家とか影響力のあるとこが手引きしていたんやろなあ」「理事会の力って、うちらが思ってるよりも大きいんや」
白衣の女(つたや)は茶で喉を湿らせると、また言葉をつづる。
「裏切り行為もやりようによっちゃ、裏切り行為と見えないようにはなんぼでもできる。大人はずるがしこいんや。覚えとき」
自分の手を汚すのを嫌い人を使う者、自分の手で未来をつかもうとする者、どちらが何を見いだすのかはまだ分からない。
「理事会は昔からこうだったのか?」
誠一がまだ納得できないような顔をして問う。
「理事会どころか学園自体もこんなじゃなかったんよ。入り乱れての性行為、過度の能力暴走…なんてなかったさ」
遠い目をしてそう言うつたや。誠一は何も言えずつたやを見つめ続けるしかなかった。
「お館様・・・戻ってまいりました」
そこに現れたのは奈々子と絵里子・・・2人とも黒い山伏姿である。
「どうだった家の方は・・・」
「どうやら鳳家は完全に誠二様が掌握してらっしゃるようです。そして、鈴木家も誠二様の後見人の麟華様の動きが活発になっています・・・」
むむむと唸る誠一。理人がその誠一に聞いた。
「当主の君でもどうにもならない人物やの?、その麟華って人??」
「ウチの家は厄介でね・・・鈴木、雨宮、鳳の家共通して時期当主の子供以外は女の子として育てられる習慣があるんだ。麟華姉さんは僕の姉だけど、母親が烏の出だから当主になれなかったのさ」
溜息をつきながら話す誠一。
「僕の父、誠清は17年前に刹那のお爺さんと相打ちになって命を落としてるんだ。その当時、麟華姉さんは16歳。僕の母さんは雨宮家出身だったから鈴木家での力が無くて、姉さんが後見人となった訳」