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規格外の男
官能リレー小説 - スポーツ

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規格外の男 16

「彼はクロコダイルズのオーナーで私の友人でもある、ケインズさ」
「初めましてだな!、君の門出を我がチームで迎えさせれるとは光栄だぜ!」

がっちりとした南部男が満面の笑みを見せる。
恐らくスコットはケインズに依頼して選手枠を空けて貰っていたのだろう。
交渉権があるから実質的な交渉事は無理だが、友人にお願いして流れぐらいは作れる。

そしてクロコダイルズの本拠地ケナーはニューオリンズの隣。
アメリカ的な離れた隣では無く、ニューオリンズと市街地を形成する本当に隣だ。

「お世話になります!」
「いいかい、監督のヘンリーは頑固だが、見る目はある男だ・・・彼を認めさせて試合で活躍して、1ヶ月後には1Aを目指そうじゃないか!」

マイナーリーグはジーンズ中に選手の入れ換えは頻繁にある。
最下位のルーキーリーグから始めても、認められれば昇格していくシステムだ。
逆に働きが悪いと直ぐに解雇され下部のチーム行きだ。


早速翌日からチームに合流し練習に参加する。

「ふむ、体格は見劣りしないな…まずはバッティングから見せてもらおうかな」
ヘンリー・ウェルズ。
現役時代は中距離打者だった彼は、過去に何人もの日本人野手のメジャーリーガーとチームメートだった。
その中でも一人、忘れられない男がいた。

鈴置一馬。
日本時代から安打製造機として注目を浴び続けてきた男。
その才能、バットコントロールはアメリカでも発揮され首位打者、最多安打を何度も獲得。
そして今もなお現役である。

彼は小柄では無かったが慶太程は大きな身体では無い。
しかし、全くハンデは無くメジャーの第一線で戦い続けていた。

むしろ慶太は、ヘンリーがニューヨークでプレイしてた時の和製長距離砲、松崎尚樹に似ているかもしれない。
彼は日本時代は長距離砲として東京ギガンツの主砲であったが、メジャーに来て長打を狙わず勝負強いバッティングに変えて成功していた。
なのでヘンリーは、慶太もそんな打者のイメージで彼のバッティングを観察していた。

だが、右打席に入った慶太の構えはオープンスタンスのバットを高く上げる大きな構え。
鈴置や松崎のイメージとは違うバッターだった。
バッティングピッチャーが構えると、ゆったりとした動作・・・
緩慢にも見える動作にヘンリーも自分でイメージと違う慶太にやや戸惑った。

そしてバッティングピッチャーから放たれた球。
ゆったりとした動作で軽く振った印象だった。
しかし、バットが捉えた球は大きく高い放物線を描いて・・・
そのまま場外へと消えていく。

「おいあれ、手品かなにかかよ!」
「ニンジャって奴じゃないのかあれ!」

チームメイト達もざわめき、ヘンリーはあんぐりと口を開ける。
これは、日本人にはいないと思っていた本格派の長距離砲らしい・・・
ヘンリーは掌で顔を覆って笑い出す。

「OK!、ケータ・・・素晴らしいじゃないか!」

今年は昇格有望株が揃うクロコダイルズだが、今日来たばかりのこのアジア人の少年がどう見ても一番だった。
全くケインズもどこに隠してやがったと、オーナーに脱帽したヘンリーは、慶太に守備走塁を見せるように指示してニヤリと笑ったのだった。


そして、合流その日の試合が始まる。
慶太は・・・
ベンチだった。

当然そうなると言うか、入ってチームとして連携が取れない慶太をいきなり使うと言う事は誰が監督でもあり得ないだろう。

「まぁ、焦らなくともお前さんはその内使われるさ」

そう言うのは今日の先発ピッチャーのアンドリュー・ロイスである。
彼もルーキーだが、キャンプから参加してローテーションの一角を占めている。

彼は大学卒で、パワー型のピッチャーではなく多彩な変化球を駆使する技巧派。
しかもサウスポーで、ポテンシャルは慶太の先輩である鳴沢以上との評価もある。

「ありがとう、僕もそう思ってる」
「練習のバッティングはビビったぜ、敵じゃなくて良かったと思うくらいさ」
「ははは、そんな…」

アシュレイの教えもあって英語でのコミュニケーションもバッチリだ。
この直前にはエステルからスペイン語も教わっており、中南米出身の選手とも無難に会話ができる。

今、打席に向かうホセ・ルイス・モラレス。
慶太と同い年のキューバ出身の選手。本職は捕手だが今日の試合ではDHで出ている。

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