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規格外の男
官能リレー小説 - スポーツ

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規格外の男 1

「日本の野球には興味ないです。僕が目指しているのは世界一のプレーヤーなんです」

夏の甲子園が終わって数週間。
真夏のフィールドを盛り上げた選手の一人、行徳学園の水瀬慶太は取材する記者たちの前で、こう語った。

「それって…高校卒業してアメリカ、ってことで?」
「ええ、もちろん!」



「言ったわねぇ、慶太」
取材を終えて引き揚げる記者たちにお辞儀する慶太に、彼よりもずっと小柄なスーツ姿の女性が声をかける。
小柄とはいえ金髪で碧い瞳、可愛らしくかつ美しい見た目は見る者を引き込ませるようだ。

「見てたんですね」
「見せてもらったわよ」

アシュレイ・テイラー。
学園の英語教師を務める24歳。
彼女の父親は超一流のメジャーリーガーを何人もクライアントとして受け持つ敏腕代理人。

また、慶太とアシュレイは学園公認のカップル、とも言われていたりする。

「きっと各方面から無謀な挑戦と言われるでしょうね」
「うん、そうなると思う」

アシュレイからすれば年下の少年でしかない慶太だが、普通の大人よりしっかりしてると思っている。
メジャーに挑戦がどれだけ厳しいかの認識はあるのだ。

しかし、彼がそれを口にするぐらい、水瀬慶太と言う男は規格外なのだ。
100m11秒台の俊足、内野ならどこでも守れる守備力。
そしてレーザービーム級の強肩。
だが、彼の守備や走力は彼の才能の中ではおまけにしか過ぎない。

その1番の才能は飛ばす力・・・
4打席連続本塁打を含めて甲子園本塁打記録を樹立。
甲子園を狭くした右の大型大砲と呼ばれる長打力こそが彼の最大の能力なのであった。

だが日本人で内野の大砲は誰1人メジャーで成功していない。
しかも、高卒で渡米してもメジャー契約はありえず、他のルーキーに混じってマイナーから這い上がらなくてはならない。
日本の野球を挟んで挑戦するより高いハードルと言える。


「冗談じゃありませんよ。絶対成功するわけがない。絶対やめるべきです」

ある野球解説者が慶太の挑戦に際し、こう述べた。
彼は日本のプロ野球界で唯一3000本を超すヒットを放った大打者である。

「厳しいのはわかってます。でもメジャーは僕の夢なので。遅くなるのは嫌なんです」
慶太は取材した記者にこう答えた。


「えっと…アシュレイ」
「何?」
「日本のプロに入らないけど、メジャーに行く場合って、プロ志望届って必要なのかな」

「必要よ・・・だから、ドラフトで指名する球団も現れるでしょうね」

高校生の場合、日本であれメジャーであれプロ志望届を出さねばならないルールとなっている。
なので本人がメジャー希望と言っても指名する球団が出て来る可能性は当然ある。
しかも慶太と言う存在は、普通ならドラフト1位で複数球団が競合するレベルの選手である。
数年前、とある超高校級の選手がプロ志望届を出してメジャー挑戦を発表したものの、ある球団だけが強硬指名を行った事がある。
その球団は選手に投打の二刀流を打診して、選手もその球団に入ったのだが、そんな事態が起こりうる可能性はある訳だ。

「やっぱり大変なんだねぇ」
「それならやめちゃうかしら?」
「まさか!・・・絶対にメジャーに行くよ!」

慶太の気持ちは動かないが、ここからは大人の世界だ。
マスコミを敵に回して悪役にされてしまう事も考えられるし、四方八方から説得と言う名のいらんお節介がわんさかと来るだろう。

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