邪宗ふたなり教 15
「ただいま〜〜あれ?」
下の妹である関 継美(せき つぐみ)が帰って来てリビングに顔を出す、確かお稽古事を複数していて今日はスイミングスクールの日だ。
「お帰り。継美、お客さんだ」
「こんばんわ」
「こんばんわ、お邪魔してます」
自分が通う女学園で有名な先輩である事に気が付いてキョトンした。
「青柳 雫さんだ、ボランティアグループで知り合ったんだよ」
「へぇ〜〜やるねぇ、お兄ちゃん、お母さんには内緒にしておくわ……」
「サンキュ」
「それよりもお腹すいた」
制服を着替えに自分の部屋に戻ると彼の表情は暗い。
「前の彼女と一緒の所を見て継美は内緒にしていたんだけど、母親が無理やりに口を割らせてね、それできつく当たった事があったんだよ」
「そうなんだ」
「告げ口したと思いこんでいたからね……親父が仲裁しなかったら今の様な会話すらしてないよ」
彼は手際良く料理を用意して言うが表情は今でも戸惑っている。
「(そう言えば彼女は一時期礼拝堂の懺悔室に良く通っていたと言うのはこの事だったんだ)」
雫は事前に見た詳細な報告書を思い出していた。学校ではやはり母親の事もあって本当の友達が居ないので学園の図書館で一人でいる事が多くクラスでも他人に少し距離を置いていると言う感じだ。
「お兄ちゃん、後は自分でするから」
気を使っていると言うよりも兄に対して恋心があるかもしれない。だがそれは禁じられた恋なのだ。
和子が乗って来た自動車は崖下に落下した頃には彼らはその場から去っていた。信者である警察官らも何事もなかったように振る舞う。夜明けになれば通りすがりの他人が見つけて騒ぎになるが所轄が上手く誤魔化す、和子は空別荘の一つに運び込まれる。
「キョウコ様に連絡を」
理事長は楽しみにしていた、キョウコ様により甚振られた後は自分専用の精液便所になる事に。
キョウコ様とセックスすれば人妻でも簡単に他人のペ○スを夫の目の前で銜え腰を振る。夫も寧ろ燃え上ってシゴいたりする事もあり、彼は々から和子を精液便所にする事に決め、信者になると時間をかけて幹部信者やキョウコ様に接して信用を得ていた。雫を受け入れたのもこの為であり、学園をふたなり教の拠点にする為の布石であった。
「理事長、キョウコ様からです。大義であったと」
「おおっ……気にいってもらえた様子か?」
「はい」
貸別荘でも一際奥まった場所にある家屋はボロボロであるが昔の防空壕と繋がっており手直ししていた。閉じ込めるにはうってつけの場所だ。
和弘は刑事からの報せを受けて驚いていた。親父も知らない土地で母親の自動車が崖から転落、母親は行方不明であるが近くの山林に所持品や衣類が散乱しており事件性があると言われたのである。
「では、この場所に心当たりはないと」
「はい」
親父も二日酔いの頭が吹き飛ぶほどで無言だった。
「恨まれる事は」
「たくさんありますよ、和弘も高校卒業まで随分と肩身が狭い思いをしていますから」
「そのようですね……関係先でもモンスターペアレンツだって聞いたものですから」
縁無メガネにシンプルながらも品が良いスーツを着た刑事に親父は頭を抱える。
「妻の実家は地元でも有名な名家で国会議員も何人か輩出してます」
「……つまり恨まれる人物が多過ぎて検討が付かない」
傍にいた若い刑事が言うと親父は頷いた。
「そちらのお嬢さんは?」
「青柳雫です、聖マリア女学園高等部二年です。和弘さんとはボランティアグループで一緒になって活動してます。彼の母親とは会話した事はないです」
「はぁ、高校生ね……失礼、小学生に見えたのでつい」
「いえ、慣れてますから」
「青柳さんは関 和子さんと面識はないのですね」
「校内で挨拶はした事あるかもしれません。会話はした事もないです」
雫は刑事が只者ではない事を感じていた。