PiPi's World 投稿小説

華が香るとき〜外伝〜
官能リレー小説 - その他

の最初へ
 27
 29
の最後へ

華が香るとき〜外伝〜 29

「うるせえ! さっさと出すもん出しやがれ!」
数人の不良が一人の男子生徒を取り囲み、カツアゲしていたのである。これぞ天の助け、今日の俺達は神に愛されている! まず貝丞が駆け出して行き、不良の一人に飛び蹴りを浴びせた。
ドカアッ!
「ぐぎゃっ!」
蹴られた相手は一溜りもなく倒れた。その男を仁王立ちで踏みつけながら、貝丞は不良の人数を人差し指で数えていく。
「一、二、三、四、五、六、七。これだけいれば何とかなるな」
「貝丞、足元足元」
「あっ、こいつを入れて八人か。もっといいや」
「な、何だてめえはっ!?」
遅ればせながら不良の一人が凄んだ。全員の注意が貝丞の方に向く。その隙を突いて洋介は不良達の後ろをすり抜け、カツアゲされていた男子生徒をその場から連れ出した。
「さて、それで用件なんだけどね」
洋介が現場に戻ると、貝丞が不良達に話しかけているところだった。
「回りくどく言っても分からないだろうから、直球で言うよ。君達には俺達の部活の犠牲になってほしいんだ。もうちょっと詳しく言うと、この旧校舎を綺麗に掃除してほしいんだよね」
「ふ、ふざけんなっ! なんで俺達がそんなこと……」
「やらないと、死ぬから」
言うが早いか貝丞は、すっと左腕を振り上げた。拳が不良の一人の顎を捉える。
ゴッ!
打たれた不良は、糸の切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた。それを見た仲間が狂ったようにわめき立てる。
「この野郎、やりやがったな!」
「ただで帰れると思うなよ!」
洋介からは不良達の後ろ姿しか見えないが、どうやら彼らは相当にキレているようだ。この後の展開がおおよそ読めた洋介は、地面に視線をやってあるものを探し始める。
「おっ、あった」
幸いにして、目当てのものが見つかる。それは一本の古びたロープだった。
「よし。ちょうどいい長さだ」
洋介はロープを拾うと、旧校舎の壁に沿っておもむろに移動した。貝丞や不良達からは離れていく格好だが、言うまでもなく逃げるのではない。適当な場所で立ち止まった洋介は、一本の木の根元にロープを縛り付ける。さらにロープのもう一方の端を持ち、建物の蔭にそっと腰を下した。
「どっこらせ、と」
ちょっと首を出して貝丞の方をうかがうと、一際体の大きな不良が前に出るところだった。リーダーと思しきその不良が、威嚇するように貝丞を睨み付ける。
「てめえ、覚悟はできてるんだろうな?」
「ええと……八人でやるとどれくらいかかるかな……」
もはや貝丞に、不良達と会話する意志はないようだった。それを知ってか知らずか、下っ端の不良達はリーダーの後ろに隠れ、口々に煽り立てる。
「ケンジさん、やっちゃってください!」
「もう後悔しても遅いぞ。このチビ!」
「ケンジさんはな、空手の全国大会で何度も……」
「あー、もういいや」
ゴッ!
貝丞は、先程と寸分違わない動きでリーダーをノックアウトする。先方には何か肩書きがあったらしいが、全く関係なかった。
「ひ……」

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す