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華が香るとき〜外伝〜
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき〜外伝〜 24

(第四話終了。第七話:「野島崎沖海戦」へと続く)




第五話:「超執筆編」

ここで話はいったん過去へ戻り、桜達がまだ洋介の所在を突き止めていなかった頃にさかのぼる。
東京都内のある場所に、都立月倫(がちりん)学園と称する高校があった。世界アホ高校ランキングのトップに燦然と輝き、カタカナが書ければ入学できるという教育機関だ。
ある夜のこと。その月倫高校の敷地の外れにある建物の一室から、異様な声が外に漏れていた。
「……っ……た」
「く……ゅ……」
「……li……y」
入口に「暇潰し同好会」という意味不明な看板がかかったその部屋の中で、一体何が起きているのか。見ると何ということはなく、容姿の整った三人の少年が机に向かい、それぞれノートパソコンのキーを叩いているだけである。だが、よく注意して観察すると、彼らの眼が血走り口元から絶えずうわごとが漏れているのが分かる。とても尋常な精神状態とは思えない。さらに奇怪なことには、彼らは三人とも体のあちこちに包帯やギプスをしていた。何か事故にでも巻き込まれたのであろうか。
「よし、第三章終りだ……」
もっとも、彼らにとって負傷は何の障害にもなっていないようである。三人のうち、最も大柄な少年がつぶやき、キーボードから手を離した。彼こそは何を隠そう、我らが主人公中村洋介である。
「お疲れ。こっちにくれ」
洋介の向かいに座る、小柄な少年が答えた。彼の名前は玉波貝丞(たまなみ かいすけ)。洋介の悪友その一にして、この暇潰し同好会の会長である。
「あの……切りのいいとこだし、ちょっと休憩しない?」
洋介の横に座る気弱そうな三人目の少年が口を開いた。彼の体格は貝丞よりやや大きいぐらいであろうか。洋介と貝丞によってこの部活に引っ張られた、薄幸の美少年初雪福名(はつゆき ふくな)である。
「いや、この際一気にやっちまおう」
「ああ。こういうのは勢いが肝心だ」
「う、うん……」
提案を即座に否決され、福名は大人しく作業に戻った。洋介は貝丞のパソコンに、出来たてほやほやのデータを送信する。しばらくして、彼らの口から再びうわごとが聞こえ始めた。
「……ん……へ」
「ほ……き……」
「……al……t」
三人は一体、ここで何をしているのであろうか?
実は彼らは今、「オナニーが支える日本の経済」という学術論文を執筆しているのである。洋介が本文を書き、福名が論文に載せる数式やグラフを作るという役割分担であった。さらに出来上がった部分から、貝丞が英文に翻訳している。日本のみならず、世界中に論文をばらまく腹なのだ。
「三章分終り……」
気だるい声で福名が宣言する。貝丞は早速その分を受け取ろうとした。
「お疲れ。それじゃ……」

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