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黒い宴@
【若奥さん 官能小説】

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前編-2

タクシーが去るのを見送った美咲は、大門の柱に据え付けられたブザーのボタンを押した。
ギイィィィ…
間もなく、大門の横の木戸が軋みを立てながら開き、無表情の老女中が顔を出してきた。
「はい…どなた様で?」
「あ、あの…加藤と申しますが、羽柴様はご在宅でしょうか?」
「ああ…おりますよ。どうぞ…」それだけで得心したのか、老女中は相変らず無表情のまま美咲を中へと招き入れた。
美咲は木戸を潜ると、老女中の後について広い庭を横切り、屋敷へと向う。不安と緊張を紛らわせるように前を行く女中の背中に声を掛けた。
「あの…ここには、羽柴様がお一人でお住まいなのですか?」
「ええ…まあ…」女中は振り返りもせずボソリと答えるだけであった。
無言のまま屋敷の中に入ると、女中は薄暗い廊下を案内し、そこだけ煌々と灯りに照らされている障子の前で立ち止まった。
「旦那様、お客様ですよ…」
「ああ…入りたまえ…」
中から男の声が返ってきた。女中は、美咲に中に入るよう目で促し、立ち去って行った……。


「失礼します」
美咲は廊下に正座し、両手で障子を開けると、敷居の前で両手を突いてお辞儀をした。
「うん?どなたかな?」
平伏している美咲の頭上から粘っこい男の声が降りかかってきた。
「はい…加藤の妻の美咲と言います…」
「加藤?ああ、この前ワシの所に支援を求めてきた、あの男ね。まあ、頭を上げて、中に入りなさい」
「はい、失礼します」
美咲は中に入り、障子を閉めると、視線を正面に向けた。そこは六畳程の簡素な和室であった。その真ん中に置かれたテーブルの向こう側から、一人の男が浴衣姿の太った身体を座椅子にふんぞり返らせ、美咲を見下ろしていた。この男こそが羽柴英吉であった。
還暦近い羽柴の額は禿げ上がり、耳の後ろから後頭部にだけ真っ黒な髪が僅かに残っているだけであったが、美咲に向けられている鋭い眼光には裏の世界の権力者といった威圧感を漂わせていた。その上、浅黒く、脂ぎった肌に染みを浮かせた羽柴の容貌は好色な男の顔そのもので、これまで何人もの女を餌食にし、屈服させてきた下劣さまでもが感じられた。

美咲は男を一目見たときから酒の相手だけでは済まされないことを悟り、後悔と不安と恐怖に全身を微かに震わせ、羽柴の視線に耐えることしかできないでいた。
そんな美咲の心中など意に介さずといった風の羽柴は、これまでも同じように卑劣な手段で餌食にしてきた人の妻の中でも、飛びっきりの美人でスタイルの良い美咲を目の前にして、これからこの身体をどのように味わってやろうかと劣情を高めていた。
「それで?その加藤さんの奥様がワシにどういったご用件かな?」

自分から美咲を差し出すよう求めておきながら、わざとらしく尋ねる羽柴の粘りつくような口調に美咲は嫌悪すら感じ始めていたが、それを悟られないように再び平伏し、答える。
「は、はい…主人の会社を支援していただけるとのことで…その…一言お礼をと思いまして…」
「ほう…奥さんがわざわざ足を運んできたということは、ワシが御主人に要求したことを了承してくれたということかのう?」
「……はい…」美咲の声は今にも消え入りそうであった。
「一晩、ワシに付き合って、楽しませてくれるということかのぉ」
緊張なのか怯えなのか、もう美咲は声を出すこともできず、うな垂れたまま頷くだけであった。その仕草は、美しき人妻が愛する夫のため望まぬ男に自らその身を差し出すといった風情を醸し出しており、羽柴の被虐心を高めていった……。



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