投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

非線型蒲公英の最初へ 非線型蒲公英 80 非線型蒲公英 82 非線型蒲公英の最後へ

非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-7


「ひよちゃんって言うんだよ」
 無駄に嬉しそうに悠樹が付け足す。
「ふぅん、ひよちゃん、か。カワイイね。でも、私としては『ひよたん』の方がいいと思うけどな」
「…それはちょっと」
 この感性、流石は悠樹先輩のお母さんだな…と妃依は思った。なにしろ『ひよちゃん』と初めに呼んだのは悠樹先輩なのだから。
「叔母様、情事が一段落着いたのならば、暇つぶしに付き合って下さらないかしら」
「情事って、そんな事してないよ。私は」
 嘘にしか聞こえなかった。
「あ、聡君が戻ってきたら五人だね、色々出来るよ?」
 その『色々』というのは、やはりカードゲームなのだろうか。何故…と思うだけ無駄なのだろうか。
 結局その後、聡がリビングに戻ってきて、すぐさま『大富豪』を始める事となったのであった。


「…あ、6、出します」
「私は9ね」
「11、イレブンバックだよ」
「じゃあ、3だね」
「お、俺、パス」
 場が流れた。
「それじゃあ、聡クンの為に5から」
「ぱ、パス…」
「…先輩、どこまで弱いんですか…8切りで、4」
「10捨て、5を捨てるわ」
「Aで、ハート縛りだよ、お母さん」
「ふふん、舐めないでよ、ハートの2」
「パス…」
 で、そんな調子でゲームは続き…。
「…また、大貧民ですか、先輩」
 いい加減勝っても良さそうなものだが、聡はかれこれ20連続大貧民だった。
「何でだ…仕組まれてるんじゃないのか? これ」
「でも、カードを配っているのは聡でしょう? どちらにせよ、貴方の所為だと思うのだけれど」
「聡クン、やっぱりこういうのに弱いんだな」
 冴子は楽しそうに聡の肩を叩いた。
「はーやーくー、配ってよぉ、聡君」
 悠樹は悠樹で20連続大富豪だった。いくらなんでも勝ち過ぎだ。
「クソ…何故勝てない…何故だ…」
 聡は親の仇を見るような目で(とは言え、本当に両親に仇ができたら仇に感謝するが)悠樹を睨みつける。
「…ある意味、才能ですよね。二人とも」
「そうね…どんなに戦略を練っても、悠樹にだけは勝てる気がしないわ」
 琴葉にすらこんな事を言わしめる悠樹の運とは、妃依にとって神の力と同義だった。
「ところで、今更聞くってのも馬鹿馬鹿しいけどさ…ひよちゃん、どうしてここに来たんだ?」
 本当に今更だった。なにしろ、妃依がここに来てから既に三時間以上経過している。
「…改めてそういう質問をされると、私も何故ここに居るのか解らなくなってくるんですけど」
 妃依は二時間以上、努めて何の疑問も持たないようにしてトランプをしていた。しかし、理由を問われると、とたんに疑問が膨れ上がってくる。
「構わないよ、遊びに来るのに理由なんて必要ないんだしさ」
「そうね、叔母様」
「遊ぼうって気持ちが大事なんだよね」
 ああ、この二人のこういう所は冴子さんの受け売りなんだ…と、妃依は深く納得してしまった。


非線型蒲公英の最初へ 非線型蒲公英 80 非線型蒲公英 82 非線型蒲公英の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前