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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-60


『そそ、そんな…!! 琴葉様ァッ!? それならば一体何故!? 私は造られたっていうんですかッ!?』
「何故って…そうね、ただの暇つぶしかしら」
『な、何という驚愕の事実!! 私は望まれて生み出された訳ではないのですか!? アアッ!! 琴葉様!! 嘘だと言ってよ琴葉様ァァァァッ!!』
「妃依、浴室に行くついでに、その煩わしい棒を捨ててきて頂戴」
「…あ、はい…解りました」
『ちょっと待ってくださいよ、マスター!! ハイ、じゃないですよ!! 私が頼んだ時は渋ったくせに、どうしてこんな時ばかり素直に二つ返事なんですか!!』
「…そんな事…いちいち、説明するまでもないかと…」
 妃依は呆れ顔で言いながら、漫画雑誌の傍らで直立していたヘクセンを手に取った。
「…それに、今から浴室に行くんですし…さっきのヘクセンさんの希望とも、まあまあ一致してるじゃないですか」
『回収と放置じゃ天と地の差があるんですよ!!』
「…はぁ、そうですか」
 喚き散らすヘクセンの言葉をサラッと流して、妃依はさっさと浴室へと向かう事にした。


「そう言えば、聡さんの御両親は御存命でいらっしゃるんですか?」
 茉莉は、未だに仰向けで倒れている聡の傍に屈み込んで、小さく首を傾げながら問うた。
「…え…? あ…ま、まあ…生きてますけど」
 つい今さっき、散々な目に遭わされたばかりだというのに、何処と無く無防備な茉莉の仕草に、聡は一瞬、我を忘れて茉莉に見惚れてしまった。
「そうなんですか。それじゃあ、『向こう』に渡って色々と手続きを踏んだ後は、吉祥さんの所で石積みをする事になるんですね」
「そ、そうなるっすね…霊魂さんにとっては、かなり悲惨な事に…」
「は…? 石積みって…あ!!」
 親よりも早く黄泉路に旅立った子供は、両親に不幸をさせたという理由から、賽の河原で永遠に石積みをさせられるという。つまり、向こう岸に居るあの子供達の事である。
 聡の両親は(この場合の聡にとって)不幸な事に、元気に生きているので、聡もその仲間に入れさせられるという事なのだろう。
「ま、待ってくださいよ!! 別に俺、両親に不幸な思いをさせて死んだ訳じゃないんですよ!? 何て言うか…遠回しに殺害されたと言ってもいい位だし!!」
 聡はおもむろに身体を起こすと、茉莉に食って掛かった(自分の死が前提の話だという事は失念していた)。
「お役所仕事はテンプレート対応がモットーですから、そういう細かな事情に柔軟じゃないんですよね」
 実も蓋も無く言い放つ茉莉。
「あー…でも、それなら尚更、霊魂さんの死亡判定レベルって…見た感じ、強制渡河までは至ってないような気がするんすけ…どほぉっ!!」
 何か重要な事を言い掛けた吉祥のこめかみに、茉莉が後ろ手で思い切り投げた石が違わず直撃した。
「吉祥さん、駄目ですよ? 外部の人に機密事項をバラす様な事をしては」
 吉祥の方に振り向いた茉莉が人差し指を立てて、微笑みながらも少し咎める様な口調で吉祥に言ったが、当たり所が悪かったのか、吉祥はうつ伏せに倒れたまま痙攣しているだけで、返答などとても出来る様な状態ではなさそうだった。
「死亡判定レベルとか、強制渡河って…何ですか?」
 恐らく自分に関する事なのだろう、と当たりをつけた聡は、唐突で不自然過ぎる口封じを行った茉莉に聞く。
「ん〜…まあ、そんな事は置いておくとして…」
 『置いといて』のジェスチャーを交えつつ、にこやかに返された。
「いやいやいやいや…!! もう、その笑顔には騙されませんよ!? 俺は!!」
 とは言ってみたものの、騙されない自信は皆無だったが。


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