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Odeurs de la pêche <桃の匂い>
【同性愛♀ 官能小説】

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第1章 脱皮-5

3、体験

 母の長期の海外出張が決まったのは夏休み直前でした。私に未来という親友ができたことを知った母はたいそう喜び、<夏休みのママの留守の間、私の家でミクと一緒にお勉強したい>とお願いすると、快く許してくれました。
 父は既に居りませんでしたが、三人の女性のお手伝いさんは離れで同居しておりました。サキという一番年かさの女性は、母に変わって私を育てたような人でした。そして若くて元気な小枝子と智代です。彼女たちは私を妹のように可愛がってくれましたので、外出を好まない私にとっては唯一の信頼できる家族のようなものでした。とはいえ、この3人のお手伝いさんは、母の方針というより、身分の違いのような意識を余程厳しく押しつけられていたようで、私が彼女たちの住む離れに行くのは禁止されておりましたし、彼女たちは、朝の掃除以外気軽に母や私の個室に入ってくることはありませんでした。
 これは、今考えても不思議なのですが、母が命じる食材の買い出しは彼女たちの役割ですが、母と私の食事だけは母自らが料理をしておりました。私も小学校に上がる頃から、自分の食事くらいはできるようにと、そんな時は面倒がる様子もなく、むしろ楽しげに、かなりの料理ができるまでに手ほどきをしてくれていたのです。
 今疑ってみれば、母は、誰が何を入れたか分からない食事は絶対口にしてはいけない、という、敵を持つ人の自己防衛ではなかったかと思ったりします。

 ミクはそんな母に初めて会ったのです。
 ミクを見て、いつ気まぐれな母の機嫌が変わるかがとても心配でした。なぜなら、私の友達、それも初めてできた友人と母の留守中同居する、という私の行動が、母にしてみれば信じられない変化だったからです。
 でも案に相違して、母は上機嫌でミクを迎えてくれました。
 ミクは母に見とれてはにかみ、<おばさまって、モデルなさってるの?>と私に囁くくらい美しいと思ったようです。母もまた、ミクの可愛さを余程気に入ったようで、手を握ったり肩を抱いたりする素振りは異様なほどで、それはミクを有頂天にさせるほどでした。
「ミクちゃん可愛い……翔子のお友達っていうから、どんな子かしらって楽しみだったのよ。ほんと可愛いわ。お雛様みたいね。翔子の背はまだ伸びるみたい。そのうち私を見下ろすんじゃないかしら。女の子はミクちゃんのようじゃなくちゃ。翔子、うらやましいんじゃなくって?」
 母の剣呑な言葉遣いには、私はいつものことですから気にも止めませんでしたが、ミクは余程驚いたらしく、
「ミクは、翔子さんの綺麗さこそうらやましいですわ。やっぱりおばさまの血筋ですのね。翔子はきっとおばさまのようになりますわ」
 母の顔が一瞬強ばったのを私は見逃しませんでした。<考えてみれば小学生>そう思い直したのでしょう。すぐ元の優しい声に戻りましたが、美しさの中の怖さにミクは気付かなかったようでした。
 母は、あれこれと留守中の注意や、整えてある食材の使い方などを丁寧に教えながら、その夜は母の手になるフランス料理が出来上がっていき、賑やかな夕食になりました。旅先のフランスの話を嬉しそうに語る母の姿は、今まで見たこともない優しさに溢れておりました。ワインのせいだったかも知れません。私も、一瞬見せた母の優しさを懐かしく思い出します。

 翌朝目覚めたとき、ミクが夕べ私のベッドに入っていなかったことに気が付きました。母は早朝に家を出たらしく、家の中は静まりかえっておりました。
 小さな胸騒ぎを覚え、あわてて上掛けをはぎ取って起きようとしたとき、ミクが入ってきました。
「翔子、おはよう」
 屈託無くそう言うと、<洗面所へいくわ>と言って、
「ご一緒する?」と聞いてきました。
 コックリをする私の側まで近寄ってきたミクの体から母の匂いがしました。そして、ミクはパジャマの上だけの姿で、翻るとかわいいお尻が見えたのです。
「ミク……夕べはどこで寝たの?」
「おばさまのお部屋よ」
「どうして翔子と寝てくれなかったの?」
「だって翔子、頭が痛いからお先にって、さっさとお2階へ行っちゃうんだもの」
「……そうだったかしら? ママが飲ませたワインのせいかしら」
「そうじゃなくて? ミクも初めてだったけど、お酒が合う体質なのかしら。そんな飲んだわけじゃないけどスゴク楽しくなったわ。それに、おばさまが離して下さらなくて……。結局おばさまのベッドまで移って、ずーっとお話を聞いたり聞かせたりしていたの」
「お話って?」
「うーン……学校のことでしょ、翔子のことでしょ、それからおばさまのお仕事のこと、外国のこと……あとは……なんやかや」
「そうだったの……」
 私は、ミクの陰りのない明るい言葉に、心のどこかで安心したのでした。

 母が居ないという開放感のなかで、ミクと二人きりで過ごせるうれしさは格別でした。開放感といえば、サキや小枝子、智代までが、仕事の合間に二人の会話に入ってくることでした。智代は自分の妹に接するようなくだけた様子で私たちを笑わせたりしました。サキは、かつてこんなに笑う私を見たことがなかったかも知れません。私の顔を見つめながら目頭を押さえたりするのです。私もまた、笑いながら心のどこかが湿ってくるのを意識しておりました。
 ミクは広い家が気に入ったらしく屋敷内を走り回っておりました。<かくれんぼ>もしました。ミクがなかなか見つからなかったりすると、小枝子や智代のいる離れで話し込んでいたりして、私をたいそう驚かせたりしました。そんな愛くるしいミクのおかげで、4人でテニスのダブルスができたり、泳いだりするようになり、私にとっては180度の展開をみせた夏休みでした。


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