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Odeurs de la pêche <桃の匂い>
【同性愛♀ 官能小説】

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第1章 脱皮-1

1、夏の日に

 突き抜けるような青い空の下で、夏の日差しに焼かれている一面のテニスコート。それを取り囲む芝生の緑。青々と空を映すプール。時折のわずかな風に光の塵を空中に撒き散らす水の反映。築山の向こうで陽炎のようにゆらめく屋敷を囲む木々。私の世界の全てだったこの広々とした夏の庭。
 私は、ただのうつろな空間になってしまったその庭を、二階の部屋からぼんやりと見下ろしていました。
 一年前は、この庭のあちこちに、親友未来(ミク)の明るい声が響き渡っていたのに、夏休みを前にして突然連絡を断ってしまった彼女をいまだ理解できずにいました。テニスコートの脇に残された椅子の上で、仲睦まじく戯れている2匹のスズメ。地面に落とすその影の動きが緩慢に見えました。夏の気だるい気分は嫌いではなかったのに、この夏は、気だるさが気鬱に変わっておりました。
 私が小学校6年生、12才の夏休みでした。
 視線を室内に戻すと、私の答案用紙をチェックしているミニョン先生の横顔がすぐ側にありました。細く白い襟脚が、快適な室温にもかかわらずジットリと汗ばみ、無造作に巻き上げられた亜麻色の髪のほつれ毛が何本か貼りついています。
 白磁のようにスベスベとして、血の気を感じさせない先生の彫刻的な横顔を眺めていると、ベッド脇の壁に掛けてあるボッティチェリの大きな複製画と見比べてしまいます。私は「春」と名付けられたこの絵が大好きでした。とりわけ、三美神の横顔の女性が好きで、ミニョン先生と重なります。
「きれい……」
 無意識に、先生の横顔に向かって声を出しておりました。
「ケスクセ(Qu'est-ce que c'est)……?」
 先生は私を見つめ、私の言葉が聞き取れなかったようにちょっと首を傾げると、答案用紙をひらひらと振りながら、
「夏休み長いです。焦らずにゆっくりやりましょうね。」
 先生は私の頬をちょっと抓り、
「ショコ、頭いい。だけどイージーミス多い」

 <ノド乾かない? お茶にしましょうか?>と言いながら先生が立ち上がりかけたとき、私の下腹部に言いようのない気味悪さが襲いました。
「翔子も、お手洗いに……」
 私はそう言って立ち上がろうとして床に崩れました。
「ショコ、大丈夫!?」
 先生は叫ぶと、私の脇に手を入れて起こそうとしましたが、私は腰が上がらず、<立ちくらみですわ>と言ったものの、全身に鳥肌が広がっていく悪寒におののきました。
「オーララー……たいへん……」
 私の太ももを下から上へ何度も撫で上げる先生の白い手指が鮮血で染められていきました。
「ああ、先生……翔子死ぬのね。きっと……」
「チガウ!!」
「でも……こんなに血が……翔子、怖い……」
「チガウ、チガウ。ショコ、大人になったってこと」
 私だって知らなかったわけではないのに、先生の手に溢れる鮮血の量に頭が白くなっていたのでした。
 先生は急いでバスルームへ走り、用意したタオルを私の脚の間に差し込むと、私を抱きかかえるようにしてバスルームへ急ぎました。
 バスルームに入ると、先生は私を裸にして壁を背にバスタブに掛けさせ、片足を取ってバスタブの上に載せました。私の脚の付け根からは、まだ血が滲み出ていて白いバスタブを染めていきました。
 先生は、惚けたように見上げている私の目を、何かにためらっているように長い間見つめていました。
 やがて大きく溜め息をつくと、
「ショコが、大人になった……。ああ……ショコはやっと……Enfin tu es devenu une femme adulte.……」
 青い瞳が歪んで涙が膨れ上がるの見えました。
 先生は、自らも衣服を脱いで全裸になりました。午前の明るい日差しを浴びた先生の裸身は眩ゆいばかりに輝き、私は、あの絵の中から抜け出てきた美神なのだと確信しました。
 先生は私を抱きしめて激しいキスをすると、私の脚下に跪きました。そして私の脚の間の襞を開くと、流れ出る血を何度も何度も啜り上げ、まるで親犬が生まれたての子犬を舐めるように襞の内外を丁寧に舐め、やがて太ももの、やや乾き始めた血まできれいに舐め取ってくださったのです。
「先生……汚いわ……そんなとこ……」
 顎の奥がむず痒くなるような快感が突き上げてきて唾液となり、われ知らずなまめいた溜め息が漏れるのを押さえられませんでした。
 その時の私は、先生の行為を避けようとするでもなく、むしろ叫びたいほどの快感を味わっていたのです。


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