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本当の優しさ
【青春 恋愛小説】

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本当の優しさ-5

「一人?」
彼女の質問が一段落してから出した言葉だった....しかし俺はすぐに後悔した....何聞いているんだよ俺はって....
「友達と一緒なんだけど今ちょっと.....」
その言葉に救われた気がした....彼氏がいる?っていう風にとられたらって考えると冷や汗ものだった...
「ゴメンね!千春!」
天城さんの後ろから女の子が走って来た。
「なぁんだぁ...千春..彼氏がいたんだぁ!それならそうと言ってくれればいいのに!ねぇ紹介してくれる?」
「やだぁ麻衣勘違いしないで!木下君は中学の同級生だよ!」
「へぇ木下君か....」
俺の事を値踏みしているように見ていた。
「千春の友達で凪沙麻衣(なぎさまい)です...」
「どうも....木下和哉です。」
俺は軽く頭を下げた。
「本当にただの同級生なの?」
疑い深そうに俺に聞いて来た。
「どうして?」
「千春が男の子と楽しそうに話してるの初めて見たから....」
「麻衣!変な事言わないでよ!」
「だってそうじゃない!千春が男の子と喋るのは連絡事項を伝えるくらいで殆ど喋らないじゃないの!」
「それはそうだけど...」
「千春はすぐに誰とでも仲良くなれる性格じゃないでしょう?そんな千春が男の子と楽しそうに話していたんだから....ねぇ....本当にただの同級生なの?」
「そうよ!ただの同級生だよ!ねぇ木下君!」
「...うん....」
「なんか怪しい....」
「もう....いいから...行こう!」
天城さんは凪沙さんの手を引っ張って
「木下君またね!」
そう言って慌てて歩いて行った。



天城さんに告られたのは中学三年の今頃だった....
「木下君...今日のテストどうだった?」
期末試験が終わって帰る途中後ろから声をかけられた。振り返ると天城さんが立っていた。
「俺....数学が苦手だから....サッパリ.....」
天城さんが話しかけて来るなんて珍しいなって思いながら
「天城さんは?」
「私は....まあまあかなぁ....」
「天城さんは数学が得意だから....まあまあって言って80点を軽く取るじゃないの?」
「それは木下君のほうでしょう!私とはレベルが違うもの....木下君はやっぱり朱羽(あかばね)高校を狙っているの?」
「うん....行きたいんだけどね!天城さんも?」
「私は無理だよ....入試の科目が数学だけなら...なんとかなるんだけどね!」
「あっそうだ!今度数学を教えてよ!」
「いいわよ!木下君が得意な社会を教えてくれるのならね!」
「じゃぁ契約成立って事で....」
俺は右手を出した。天城さんは右手で俺の右手を握り締めて
「宜しくお願いします。」
天城さんは頭を下げた。
「こちらこそお願いします。」
俺も頭を下げた。頭を上げた時目と目が合って、お互いに笑ってしまった。その笑顔を見た時俺は天城さんの事が好きになってしまった....
それから俺達は歩きながら話していた。
「天城さんがこんなに話しやすいとは知らなかったよ!ずっと天城さんの事....」
「暗くて...地味な女の子だって思ってた?」
「そんな事は.....」
「いいの!自分でもわかってる....私はすごく人見知りをするので....あまり人とお話しするのも得意じゃないの....さっきだって話しかけるのものすごく勇気が必要だったんだからね!」
「俺とは正反対だね!」
「うん...だから....木下君の性格が羨ましかった....あんな風になれたらって....ずっと思ってた....」
「なんか照れるな....」
「あのね.....思い切って言っちゃうね!」
天城さんは急に立ち止まった。
「木下君の事が......好きです.....よかったら....私と付き合って下さい...」
天城さんは今にも泣き出しそうな声になっていた。
「いいよ!俺でよかったら!」
「本当ですか?」
俺が頷くと
「良かった....」
そう呟いて泣き出してしまった。
俺はどうしたらいいのかわからずただ天城さんの隣で泣き止むのを待っていた....
こうして俺は天城さんと付き合うようになった....




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