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本当の優しさ
【青春 恋愛小説】

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本当の優しさ-4

「贅沢な悩みだな....」
俺は自嘲気味に呟いた。
「あれっ?もしかして木下君じゃない?」
前から歩いて来た二人組の女の子に話しかけられた。見ると中学の時の同級生だった。
「久しぶりだね」
そう俺が言い終わらないうちに
「さっき仲谷に逢って聞いたんだけど....彼女出来たんだってね....」
「うん...」
「可愛い子だね....」
「まあね....」
俺は照れくさくって頭をかいた。
「良かった...ねぇ?」
「うん....」
二人は顔を見合わせて頷いた。
「木下君に彼女が出来たんなら言ってもいいよね?」
「うん...多分....」
二人は俺のほうを向いて
「千春の事だけど....」
千春....天城千春(あまぎちはる)....俺が中学時代に付き合っていた....元カノ....
「千....天城さんがどうかしたの?」
二人は俺のほうを見た。
「千春は....まだ木下君の事....好きみたい....」
「なに言ってるんだよ!俺は天城さんに....」
「あれが千春の本心だと思ってたの?」
「えっ.....」
「千春はね!」
一人が俺にくってかかってきた。
「ちょっと落ち着いてよ!」
もう一人に制されると
「わかってるわよ!」
そう言ってから一呼吸置いて
「千春はずっと悩んでた...木下君は無理して自分と付き合ってくれてるんじゃないかって....木下君は優しいから断れないんじゃないかって....」
「そんな事無い...俺は天城さんの事本当に....」
「だったら...何故千春と付き合ってる事隠そうとしたのよ!」
「それは.....」
「千春は...自分みたいな子と付き合ってるの知られたら嫌なのかな....恥ずかしいのかな....ってずっと悩んでた!」
「..........」
「ちょっと何か言いなさいよ!」
そう言って俺に掴みかかろうとした。もう一人が慌てて間に入って
「もういいでしょ!」
俺から引き離した。
「木下君を試そうとした千春も悪いんだから...」
そう言い聞かせて、俺のほうを向いて
「ゴメンね!私達は千春の友達だから千春の味方をして木下君を責めたりしたけど....千春はそんな子じゃないから....」
「わかってる...天城さんはそんな子じゃないって....」
「ありがとう」
そう言ってもう一人の肩を抱いて
「行こう...」
そう声をかけた。
「あっ!そうだ!可愛い彼女を大切にしてあげてね!」
そう言って俺の返事も聞かずに歩いて行った。

確かに俺は天城さんと付き合っている事を隠そうとしていた....直輝だって知らないはずだ....それは天城さんと付き合っているのが恥ずかしかったからっていう訳ではなかった....天城さんじゃなくても...女の子と付き合っている事をからかわれるのが嫌だったのである...だから直輝にも内緒にしていたのである。
そんな事を考えながら歩いていると交差点で女の子が立っているのが見えた....もしかして....そんな疑念がその女の子の笑顔を見た時現実のものとなった。
「木下君!久しぶりだね!」
天城さんだった....天城さんは軽く手を振り駆け寄って来た....あの頃と変わらない笑顔だった...
「今メール届いたんだけど!彼女が出来たんだって?」
「まぁ....」
「いつから付き合ってるの?」
「7月の半ば過ぎぐらいからかな....」
彼女はその後矢継ぎ早に質問してきた。俺はそれに答えるだけだった。


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