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本当の優しさ
【青春 恋愛小説】

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本当の優しさ-11

それは一時間程前の事だった....バイトを終えて家に向かっている時サンタクロースに声をかけられた....
「お嬢さん浮かない顔をして何かあったんですか?綺麗な顔が台無しですよ!」
私がサンタクロースを見ると
「1日早いですが....クリスマスプレゼントです!」
サンタクロースは私に小さな箱を差し出した。私はどこかの店の広告を兼ねて粗品を配っているのだと思い素直に受け取った。
「どうぞ開けてみて下さい!」
サンタクロースは私に優しい声をかけてくれた。箱を開けてみると中身は空っぽだった....
「えっ?」
私は驚いてサンタクロースの顔を見つめた。サンタクロースは笑顔を浮かべたまま
「クリスマスプレゼントを受け取ってもらえましたか?」
私が不思議そうな顔をしていると
「お嬢さんには見えなかったのですか?」
私はもう一度箱の中を確認した....やはり中身は空っぽだった....
「この箱の中には勇気が入っていたのです!」
「勇気?」
「ハイ!前に踏み出す勇気です....私がお嬢さんにお渡し出来るのはこの箱に入るくらいの小さな勇気ですが....お嬢さんの背中を押してくれる手になってくれますよ!」
「.........」
私はサンタクロースの顔を見つめ続けていた....
「クリスマスには幾度も奇跡が起きていますが....自分から前に踏み出さないと奇跡は起きませんよ!」
サンタクロースに穏やかに言われると....私にも奇跡が起きるかもしれない....そんな気がしてきた....
「ありがとうございます!」
私は笑顔を浮かべていた。
「私は明日の準備がありますので....それでは素敵なクリスマスを....」
そう言って立ち去って行った。私は目でずっと追っていた。少し歩いて振り返って
「HAPPY merry Christmas!」
サンタクロースは右手を上げて去って行った。
「勇気か....」
もらった時は奇跡が起きそうな気がしていたが、家に着く頃にはそんな気も薄れていってしまい机の上に無造作に置いてしまった....

私は再びサンタクロースからもらった箱を手に取った。
「勇気かぁ....」
私は携帯を手に取りメールを打ち始めた....これは1つの賭けだ....私は中学の頃のアドレスしか知らない....だから届くかどうかもわからない....届いたとしても木下君がそれに応えてくれるかどうかもわからない....だから賭けなのである....

明日13時

駅前の噴水の前で

待っています

千春


あえて要件だけの簡単なものにした。
「送信.....」
私は躊躇わず送信ボタンを押した。木下君はアドレスを変えていなかったのかメールは無事?送信された....
「メール送っちゃった....」
心の中ではまだ迷いがある....本当にこれで良かったのか....
しばらくすると後悔の念が押し寄せてきた....



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