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本当の優しさ
【青春 恋愛小説】

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本当の優しさ-10

バイト先に向かう途中で交差点の角を走りながら回って来た女の子とぶつかった。
「ゴメンナサイ....」
「イエ....」
その女の子を見と千春さんだった....
「千春さん?」
「えっ?」
千春さんは顔を上げて私を見た。
「美咲さん...ゴメンナサイ....ゴメンナサイ....もう二度と木下君と会いませんから....話したりしませんから....許して下さい....本当にゴメンナサイ....」
「何を言ってるのよ....ねぇ顔を上げてよ....」
私が何を言っても千春さんは謝るだけだった....
そんな時和哉と直輝君の声が聞こえて来た。角から覗くと和哉と直輝君と理彩がいた....後ろを振り返って千春さんを見ると道路に座り込んで謝り続けていた....
和哉達の話で全て理解出来た....最近感じていた違和感の理由が....ただ昔を懐かしく思っているだけ....そう思いたかった....しかし....多分....和哉の心の中に千春さんがいる....それだけではなく....千春さんの存在が大きくなっている....根拠はないがそう感じた....そして千春さんも和哉の事....
私は謝り続けている千春さんの肩を抱いて
「千春さん....もう謝らなくてもいいよ....」
出来るだけ優しく声をかけた。
「えっ?」
千春さんは驚いたような顔で私を見ていた。
「千春さんは何も悪い事してないよ....ただ....和哉の事が好きだっただけ....でしょ?」
私はあえて過去形で話した。
「うん....」
千春さんは素直に頷いた。
「私も女の子だから千春さんの気持ちはわかるよ....もし私が千春さんと同じ立場だったら同じ事をしたかもしれない....」
「美咲さん....」
「さぁ涙を拭いて...綺麗な顔が台無しよ!」
私はぎこちなかったかもしれないが笑顔で話しかけた。
「ありがとう....」
私は千春さんの手を引き寄せ立ち上がらせた。
「優しいんだね...美咲さんは....」
「そんな事ないよ....千春さんだって....」
実際私は千春さんを嫌いになれなかった....むしろ千春さんの事が....
「何か変だね....私達....」
「そうだね....」
私達は思わず笑ってしまった。




あの日からずっと木下君の事を忘れようとするけれど出来ないでいる....
「美咲さん優し過ぎるよ....」
美咲さんが嫌な人だったら....あの日からずっと考えている....木下君に対してもっと積極的になれたかもしれない....そんな事を考えている時、机の上に無造作に置かれた小箱が目についた....それは....街で粗品を配っているサンタクロースからもらった物だった....中身が入っていない空の箱....しかし....私は捨てる事が出来なかった....


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