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〜吟遊詩〜
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〜吟遊詩(第二部†旅立ち・試練†)〜-14

太陽はすっかり傾き、夕陽に魅せられた城はオレンジと紫に色付けられた。後数時間もすれば、漆黒の闇が包むのだろう。
 エアルとシェンは隠し扉の中にいた。
「シェン…あの部屋、どうしようなー」
エアルは自分の半歩後ろを歩くシェンに言った。エアルはさっきとは違い、何もなかったように冷静さを取り戻していた。しかし、
「………」
エアルの問掛けにシェンはなにも答えない。元々、寡黙な人なのだが今はそぅいった理由で黙っているのではなかった。シェンは心配していた。
「…っ王、侵入者を殺してしまわれたのですか?」
エアルの後ろ姿に尋ねた。
「……シェン、俺が怖いか?また…誰かれ構わず人を殺すと思っているか?」
顔が見えないので真意は窺えないがエアルの口調は穏やかであった。シェンは静かに答える。
「王がすることはいつも正しい事でした。これからも、そうだと信じております」
シェンの言葉が終わるころ、二人は丁度階段に差し掛かった。エアルはシェンの言葉には何も答えず、沈黙が続き、ただ二人の足音が冷たい壁に反響する音だけが鳴り続いた。
━━ドサッ…━
急に鈍い音がした。メインブロックがある部屋まで、もぅ目と鼻の先。音は部屋からしたようであった。エアルとシェンは顔を見合わせ、部屋へと急いだ。
部屋の様子が、エアルとシェンの目に飛込む。
黒い霧のように広がっていたはずのメインブロックが、何かを取り囲むかのように凄いスピードで渦巻いていた。エアル達は近付けずに、入り口の近くで『何か』を見極めようと目を凝らした。『何か』は金色をしていて、床に横たわっている。
「ユノ!!」
エアルはメインブロックが渦巻く部屋に入ろうとした。しかしシェンが腕を掴む。
メインブロックはユノから立ち上がる竜巻のような形になり、徐々にユノに吸い込まれて行ってしまった。
部屋に静寂が訪れたのを確認すると、シェンはエアルの腕を離した。固唾を飲んで見守っていたエアルは自由になった体でユノに駆け寄る。抱きかかえたユノは意識がなく、力の入らない腕が床に垂れ下がった。━『カシャンッ』━━ユノのブレスレットが床にぶつかった。エアルの目がそちらに行く。
ブレスレットに付いていたガラス玉の一つに、蒼い百合の花の形が浮かびあがっていた。ユノや、エアルの腕に焼き付けられているのと同じ形の物だ。
(メインブロック…これに吸い込まれたのか)
先程、ユノの体に吸い込まれたように見えたメインブロックは、そうではなく、ユノのブレスレットに吸い込まれていたのだ。
「エアル…??」
ユノの手が動き、エアルの髪を撫でた。ユノの手足は相変わらず赤く腫れている。
「ユノ?大丈夫なのか?怪我してる…」
ユノの指先を握る。痛みで顔をしかめながらもユノは、
「平気…エアル、これで信じたでしょ?私が大丈夫だって言ったコト嘘じゃなかった…私、ダリアンを取り込んだよ」
と言って、紅い瞳を向けた。
「……どうして、あんな事言ったんだ?」
エアルはユノの目を見ないようにして、尋ねた。
━━━『どうして私を…人を信じようと思わないの?』━━


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