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〜吟遊詩〜
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〜吟遊詩(第1部†序言・運命†)〜-4

その頃…椿たちとドア一枚を挟んでユノも戸惑っていた。何度ドアノブを動かしてもドアが開く気配がないのだ。━ガチャガチャッ━
(何でぇ〜…このドアに鍵はないはずよ)
ユノはドアに持たれかかって肩を落とした。その原因は部屋の外にいる椿たちが見ていた。
「結界…ですか…。誰がこんなこと…」
金髪の男が言った。
ユノの部屋のドアにはエメラルドグリーンの色をした薄い液体が周りの壁に及ぶまで膜を貼っていた。そしてその中心から難しそうな文字が何列も外側に広がるように書き並べられていた。
「じじぃしかいないだろ。」
椿は当たり前に答えた。そして悔し紛れに舌を一度鳴らして考え込んだ。
一方ユノは…
腕を両サイドに広げ、自分の力に集中する。すると、腕にしていたブレスが形を変えていく。右にしていたガラス玉の付いたブレスはまるで溶けだしているかのように腕から離れ、ある形を造ってゆき…。数個の玉は重なり合い、やがて1つにまとまった。他の部位は長く延びたかと思うとみるみると剣の形になった。持つところには龍を思わせるような彫刻が施してあり、それと刃の間に先程のガラス玉が納まった。そして左腕に有った鎖のみのブレスが長く、剣の刄のところに巻き付いていった。剣と鎖がぶつかる度に『カシャンカシャン』といい音がなり響いた。これがユノのブレッド(能力)であった。とにかく、ユノは剣の創造を終えるとドアと逆にある、先程覗いていた窓をめがけて剣をふりおろした。ガラスをひっかく嫌な音を長く発したにも関わらず窓には傷ひとつ付かなかった。ユノはある結果にたどり着いた。
「やっぱりじぃちゃんの結界かぁ…。ビクともしない。昔怒られたときによく閉じ込められたんだよ」
ユノはもぅ一度窓の外を見た。相変わらず黒の集団と一人の男は戦い続けている。圧倒的な数にも関わらず男が不利に見えるようなものではなかった。いったいどうしたとゆぅのか。さっきまで読んでいた本のせいて事態はただものではない気がしてならない。ただの酔っ払いのケンカなのか…それならよそでやって欲しい。でも…結界が張られているというのはそれ相応の事態であろうことは頭の片隅で分かっていた。何としてでも部屋から出たかった。ユノは床に剣を突き刺し、それを包みこむように手を添えた。やがて淡い光が掌から生まれ剣に吸い込まれていく。生まれては吸い込まれて…吸い込まれては生まれる。。。ユノの血管の中でブレッド(血)が激しく流れ立てた。更なる物体を貫くために全身の力が剣に込められていっているのだ。体中が燃えるように熱い。額からは大粒の汗が吹き出した。
そんな時、ドアの向こうでも何やら作戦が練られていた。ユノは椿たちの存在に気付いていない。そして椿たちもまた同じく…。結界は外からの刺激を一切伝えないほどの力があった。そんな結界に指を触れながら椿が言った。
「この結界は…」
結界は椿の指が触れた部分を拒むかのように外側に丸く波打った。
「この結界はじじぃが死んだ時か、自らの意思で解く時以外に開かれることはない」
「じゃぁじぃ様が死ぬまで待てってことですか!?」
金髪の男は果てしなく感じるその話を聞いて落胆した。その言葉を聞くと椿の心に一つの決心が生まれた。男の肩に手を置き、囁くように尋ねた。
「ねぇ…じじぃとうちら…どっちが先に死ぬと思う?」
そぅ言った椿の指は結界に触れたその場所だけ赤く溶けかかっていた。

庭では壮絶な戦いが終焉を向かえようとしていた。最後に残ったのは若い男の方だった。つまりじぃちゃんであるのだが…。じぃちゃんの周りには黒の集団が倒れこんでいた。一先ずは、じぃちゃんが勝ったのであろうが、やはりまるっきり無事であるはずがなく…。ブレッドは限界にきていた。ブレッドは血であるため際限がある。もちろん回復はするが需要と供給が比例して成り立つように、一度に大量の力を使うと回復の分が間に合わなくなり、もちろん尽きれば死ぬ。だから測り間違えてはいけない。自分のブレッドの際限を。しかし、じぃちゃんは殆んど自分の体に流れているブレッドを使いきっていた。若返るために使ったあの術…。あの術はあまりにも力を要する。じぃちゃんの体は長く見積もっても後30分弱しか持たないだろう。それは本人が一番分かっていた。
じぃちゃんは近くの木にもたれかかって肩で息をしていた。自分の体の中を探るように目を閉じてブレッドの流れる音に耳を傾けた。確実に流れは弱くなっている。
(早くケリをつけてユノを…)
幾分か落ち着いてきた頃、後ろの方に気配を感じた。椿たちだった。
「あぁ…久しぶり。やっと会えたね。椿……ばぁさん?じゃけかのぅ?」
それを聞いて椿の顔がひきつった。椿はどぅ見ても20代に見えるのだが本当はじぃちゃんと張り合うくらい年がいっているのだった。
(うわ〜椿さんの本当の年齢知ってる人久しぶりにみたかも…)
事の成り行きを見守りながら金髪の男はそぅ思った。
「そっちのやつの名前は…」
じぃちゃんと椿は面識があるようだが金髪の男の方は見たことなかった。
「ちっ…あ〜何だっけ。お前…」
面倒くさそうに椿は金髪の男に向かってそぅ言った。さすがにそれは失礼ではないのか?
「僕はえっと…ぅ〜んサンでしたっけ?滅多に名前で呼ばれないから…」
「あぁ。そんなもんだろ」
本人も自分の名前を忘れていた…。
「ふむ…。それより椿…お前さんの術は相変わらずじゃのぅ?」
じぃちゃんはそう言いながら足元に倒れている黒の集団の一人の首筋をま探った。露になったその首元には黒い音符に羽根のはえたような印が焼き付けられていた。


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