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〜吟遊詩〜
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〜吟遊詩(第1部†序言・運命†)〜-3

じぃちゃんは自分の掌にナイフを添えた。それを強く握ると指の間から真っ赤な血が滲みだす。一瞬眉を潜めたが歯を悔い縛り、じぃちゃんは自分の血で床に何やら印のよぅなものを書き上げた。その印の形は主に円形で、その中心にじぃちゃんが立つと全身から煙がシューと音を立てて出てきた。そしてみるみるとじぃちゃんの体は変化していき、その煙が晴れて視界がハッキリする頃にはじぃちゃんの体はすっかり若返っていた。背には血で十字架の形が現れていた。
(ユノ…ワシがお前を守ってやるけぇ!!)

椿が吸い込んだ息を吐きだすと、それは歌になってメロディーを奏で始めた。それに合わせて黒い集団が戦いの構えをとりだす。教会の入り口を囲んでモゾモゾとうごめく黒い影…。その不気味な風景を金髪の男は鋭い眼孔で見つめていた。
「待てっ!!」
鋭い声がそのメロディーを掻き消した。椿と金髪の男は屋根から庭を覗き、声の方に目を向けた。じぃちゃんだった。じいちゃんはあのサングラスの間から二人を見上げた。その姿を見た椿は舌打ちをし、自分の乗っていた十字架を蹴りあげ屋根の上を走り出した。
「行くよっ!」
椿には計算外のことが起きた。じぃちゃんは自分に背を向け逃げ出す椿たちを見て余裕の笑みを浮かべた。
「あれがじぃ様ですか!?なんか若くないすか?」
椿の後を追い掛けながら男が問掛けた。
「じじぃは若返りの禁術を使った!あれじゃぁ何人いても十分な足止めにすらなんねぇ」
椿たちが完全に屋根から見えなくなるとじぃちゃんは黒の集団に体を向けた。右手に剣を練り上げながら…。
「ざっと500人くらいかのぅ…ワシを舐めちょらんか」
じぃちゃんが言い終わるかどうかと同時に黒の集団が一斉に襲いかかってきた。

ユノは枕に顔を臥し、考えていた。
(メインブロック…なんで…━━)
一つの疑問が頭に浮かんだ。あの本には封印の解き方が続けて綴ってあった。
【ブルーストーンの封印を解くには、インテリオキングダムを囲む4つの国にあるメインブロックを集めることから始まる。尚、メインブロックにはそれぞれ名前があり、それは持ち主となる人の名前と一致するようになっている…━━】
そぅ…ユノが不思議に思ったことは…
(なんでメインブロックは4つしかないの?だって純血は5人いるはずなのに…。名前が一致するならその数の分だけメインブロックがないのはおかしいよ。)
ユノはベットから起き上がると再び本を広げた。何度も確認したがそれ以上の記述はなかった。ふとベットの横にある窓に目がいった。その窓からは丁度、教会の庭が見渡せるようになっている。そして息をのんだ。窓にへばりつきユノは夢中で目をこらした。黒の集団と一人の男が戦っているのが見える。
(誰?)
急にユノは不安になった。
(じいちゃんっ!)
ユノはドアの方に駆け出し、ノブに手を掛けた……。

ユノの部屋の前には少しの廊下と階段が続いている。真っ暗でユノでさえ時々つまづくことが有るほどだ。闇の中からギィッ…と階段の軋む音がなる。
「あそこがユノの部屋か?」
部屋のドアの隙間から僅だが中の光が洩れていた。真っ暗な廊下からはその僅かな光でさぇも十分刺激的だった。言わずとも分かるだろうが、椿と男はユノの部屋の前まで来ていたのだ。若返ったじぃちゃんと戦うのは得策とは思えなかった椿はユノだけを奪って行こうと考えたのだった。しかし……
「変じゃないか?」
「そぅですねぇ。じぃ様がこんなにアッサリここまで通すとは…罠でしょうか」
「…まぁいい。その時は罠もろとも握り潰してくれるっ。それより灯りが欲しい…」
椿にそぅ言われると男は一度指を鳴らした。するとそこから大きな炎が燃え上がった。たちまち辺りは明るくなり、おおよその視覚を得ることができた。その灯りを頼りにユノの部屋のドアを見て二人はじぃちゃんの不可解な行動に納得することになる。
「「なるほど…」」
声を揃えて呟いた。


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