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『縛られた女』
【SM 官能小説】

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『縛られた女』-4

4. 謎めいた書き置き

アイコンは2つあり、一つは「書き置き」と題した文書のファイルで、もう一つは「居場所」と題した写真のファイルだった。

由香は、まず「書き置き」のファイルを開いて見た。
するとそこには、驚くべきことが書かれていた。

「お別れしてから十数年、長かった外国暮らしから帰ってきてほどなく、まさかあなたにお会いすることになるとは、夢にも思いませんでした。
でも、いたずら好きの運命の女神は、もう会うことはないと思っていた私たちを、いとも簡単に、しかも決して行きずりでは済まされない形で、会わせてしまうのですね。

帰国後、そうとは知らずに初めて顔を合わせたとき、あなたも大変驚かれたようですが、私の方は驚きを通り越してしまい、それこそ、あなたとの運命的な結びつきを感じました。
だからこそ、あなたにご迷惑をかけることになることも顧みず会っていただき、あんなお願いをしてしまったのです。

冷静になって考えてみれば、十数年の歳月を経た今、あなたはご自分の家庭と地位を築かれているのですから、今更十数年前の2人の関係を復活したいと願うのは、私の自分勝手で独りよがりな思いに過ぎなかったのですね。

でも、あなたとの再会に運命的なものを感じてしまった私は、もうあなたが十数年前私にくださった「居場所」を、Mである本当の私の居場所とすることができなくなっていました。

精魂こめて制作してくださったあなたには大変申し訳ないのですが、あなたに描いていただいたあの絵は私にとって、あなたと会うことができない状況においてこそ「居場所」になれるのであって、否が応でもあなたと顔を合わさなければならないときもある状況のなかでは、本当の「居場所」であるあなたの代わりにはなれないのです。

苦渋に満ちた本当に辛そうな顔をして、あなたは私の申し出をお断りになりました。
そしてその理由を話して、私に納得させようとされました。
それを伺って私は、Mである本当の私の居場所はもうこの世にはないと、悟りました。
だから、自ら命を絶つことにしたのです。

あなたが断る理由としてあげた可能性のことは、私にはとても衝撃的なものでした。
身勝手に思われるかもしれませんが、その可能性のことは考えたことがありませんでした。
私はMである本当の私としてしかあなたと愛し合ってはいないから、そういうことは起こり得ないと思い込んでいたからです。

でも、冷静に考えてみれば、あなたのいわれた可能性は、確かにあります。
そしてそれが事実であったとすれば、私はその現実を重く受け止めなければなりません。
どんなに辛く苦しくともMである本当の私の居場所を、あなたが描いてくださった責め絵の中に求めるしかありません。

しかし、それが事実でなかったとしたら、ああ、私はどうすればいいのでしょう?
そのとき私は、本当の「居場所」であるあなたを目の前にしながら、Mである本当の私の「居場所」をあの絵に求めることはできず、「居場所」を失ってしまうのです。

そこで私は、賭けることにし、あなたのいわれた可能性が事実かどうか、しかるべきところに依頼して調べてもらいました。

その結果が、今日届いたのです。
あなたがあげた可能性は、完全に否定されました。
ですからあなたはそのことについて、御懸念なさる必要はないのです。

そこでこの結果を受け止め、私はMである本当の私として、「居場所」を失ったという事実を受け止め、今日命を絶つことにしました。
長い間、Mである本当の私の「居場所」になってくれていた絵は、この書き置きと一緒にお返しします。

あなたにもこの絵にも、たいへんお世話になりまして、どうもありがとうございました。
今後の人生を、どうかお幸せに生きてください。

最後に娘の真由のことですが、今後も何かと力になってやってくだされば、とても嬉しいです。

              永遠にあなたにお仕えすることを願ったM奴隷 美有希 」

書き置きには、こんな謎めいた文面が綴られていた。


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