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『あるM女の告白』
【SM 官能小説】

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第2部 SM観の大転換-11

11.パパとママの思い

喫茶店で、私はすべてをご主人様にお話ししました。
うなずいたり、相槌を打ったり、短い質問を挟んだりしながら、ご主人様は熱心に聞いてくださいました。

「どうもありがとう。辛いことをよく話してくれたね。とても嬉しいよ。
お蔭で、解決の方向が見えてきたよ」
私が話し終えたところで、ご主人様がおっしゃいました。
「えっ、そうなんですか?」
私は、びっくりしました。

「そうだよ。さあ、一緒に考えていこう。
まず、死にたいと思うようになったのは、ずっと封印していた大事件のときの本当の思いが甦ったからだよね」
「はい、そうです」

「まだ10歳だったのに、これ以上ない悲しいことが起きたんだから、そのときはその思いだけが本当だと思うのは当然かもしれないね。
でも、高校生になった今では、別の本当の思いも考えられるんじゃないかな?」
「えっ、どういうことですか?」
私には、ご主人様のおっしゃろうとすることが、わかりませんでした。

「死にたいと思ったのは、大事件が起きたときの麗さんの思いだよね。
でも、亡くなった麗さんのパパとママは、どう思っていたのかな?」
「・・・・・・」
そんなことを考えたことのなかった私は、答えられませんでした。

「もっとわかりやすくいうと、麗さんが一緒に死ななくてよかったと思うのかな?それとも、麗さんが一緒に死んだほうがよかったと思うのかな?」
「それは・・・」
パパとママは死んでしまったので、パパとママが私のことをどう思ってくれているかを、これまで全然考えませんでした。

でも考えてみれば、私のことをすごく大事に思ってくれていたパパとママが、どう思うかは明らかです。

「それは、私が一緒に死ななくてよかったと、思ってくれていると思います」

「そうだよねえ、そのとき麗さんは、考える余裕がなくて思いつかなかったけど、麗さんだけでも生きていてくれてよかったと、絶対思ってくれたはずだよね。
麗さんが死にたいと思ったのも本当の思いだけど、パパとママが麗さんが生き
ていてよかったというパパとママの思いも、本当の思いだよね」
「はい、そうです」

「だったら、麗さんが後を追って死んだりしたら、パパとママはものすごく悲しむんじゃないかな?そう思わない?」
その通りです。悲しんでしまうに決まっています。
私は、自分の思いのことだけ考えて、死んでしまったからといって、パパとママの思いを考えなかった自分が情けなくなくなってきました。

「私、自分のことばかり考えていました」
私が、泣きそうな声で答えました。
「いや、そうでもないと思うよ」
ご主人様は、そういってくださいました。
「えっ、どうしてですか?」
私には、ご主人様の顔を見つめて、お尋ねしました。




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