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fantasy ability
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reality ability‐第13話‐皇希の【真】の力と“刻印詠唱”‐-2

‐一方、最上階の玉座の間‐

倒れている唖紅笥に近付く人影があった。歩く音は静かであるが、微かな殺気に唖紅笥は起きた。‥間一髪で躱した。

「‥‥‥‥なんて事をするんだ?」

唖紅笥は少し呆れた。唖紅笥の前には“ごく普通のフライパン”を持った絢音がいた。笑顔で見ていた。

「‥ふふ。貴方なら躱すって事は解っていたから、安心してやっただけだよ?」

絢音は子供が悪戯したように言った。悪びれた様子はない。寧ろ、信頼しているからこそやったようだ。

「‥‥はぁ。もう、いい。‥‥ごめんな。‥‥オレのせいで死んでしまって。」

唖紅笥は謝る。その口調は“昔”の口調。まるで、過去の物語を話すみたいに。

「‥いいのよ?‥‥そんな“過去”は悲しくなるだけだからね。」

絢音の表情は急に沈むように暗くなっていく。先程の元気な表情は完全に消えた。

「‥しかし、奴に身体を乗っ取られなかったら、オレは貴女を殺さなかった!‥‥嫌でも残っているんだ、あの時の感触は!」

唖紅笥は自分の腕を見る。その腕は逞しい。が、今は感情のせいで弱々しく震えてるのでその強さはなかった。
‥‥そして、ナイトメア・アビスが唖紅笥の身体を乗っ取り、絢音を殺した。その時の感触は一生残るだろう。
絢音は唖紅笥の手を取る。優しさがこもった視線で見詰めた。それから、安らかな口調で喋る。

「‥だから、自分を責めないの。貴方は充分に立派よ。“イレギュラー”と呼ばれている現在(いま)はね。」

唖紅笥は絢音の言葉を聞き、ただただ茫然としていた。絢音は気にせずに続けて喋る。

「統神 皇希‥‥“第2の皇希”に言われたわ。‘貴女たちは奴に好かれるように努力すればいい。’って。」

唖紅笥は統神 皇希を知らないが、絢音は何も言わなかった。‥‥“第2の皇希”で解ったかもしれない。唖紅笥の表情が物語っていた。

「‥‥でね。私はこの戦いが終わったら、第1世界に帰るわ。私の役目が終わったからね。‥‥貴方はどうするの?」

絢音は満面の笑顔だった。それは幸せであるかのように。二度と会えない者に会えたのだ。可笑しくはない。

「‥‥‥」

唖紅笥は無言で考える。数十秒後、ハッキリとした声で喋る。

「俺も第1世界に行っていいですか?そして、‥‥‥次こそは幸せにさせてみせる!」

その表情には決意の意思がかなり出ていた。もう二度と失う事がないように。

「‥‥‥。ねぇ、それは“プロポーズ”でいいかしら?」

絢音の表情は嬉しそうな笑顔があった。‥‥80万年の“答え”を今、聞く事とが出来たから‥‥。

「‥‥‥‥えっ?‥‥‥あっ!?」

唖紅笥は自分の言った事に気が付いた。‥‥‥どうやら、約80万年の2人はまだ夫婦ではないようだ。それは今でもそうだ。
‥‥‥しかし、これで夫婦になるだろう。唖紅笥は照れながらも真剣さがある表情で、絢音は満面の喜びだったから。
絢音はそのままの表情で気持ち良さそうな声で喋る。‥これが“至福”という事だろうか。

「あのさぁ、立場が変わるんだから敬語はなしね?」

絢音は敬語を使う事を禁止した。時々、使うのが気にいらないようだ。‥‥‥そういえば、唖紅笥の立場は明かされてなかった。

「‥‥‥しかし、下級神である俺は周囲に認められないだろう。」

‥‥‥意外な事と思うだろうが、そうでもない。“過去と現在”では違っているからだ。少なくとも、現在とはマシな方だろう。

「‥そんなのは関係無いわ。貴方が望むなら私は全てを失っても構わないわ。」

絢音の笑顔に唖紅笥は笑いながら頷いた。‥‥2人のこれからは良き未来が待っていそうだ‥‥





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