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tomomi
【若奥さん 官能小説】

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tomomi 完結編-1

しばらくはおとなしかった。

見知らぬ男に抱かれたあの夜を思うと体がまた熱くなり、私はきっと…どうにかなってしまう。

そんな思いから[日常]という薄くてしなやかな繭に守られて、たとえば今洗って干したばかりの白いシーツの内側で何食わぬ顔を装いながら股間の割れた部分を指でまさぐっているような生活を私は繰り返していた。

だけど…
あの夜以来、ひとり遊びが好きな私はオナニーをしなくなった。
私にとって自慰という行為は肉欲を満たすためにするのではなく、自分自身を愛でるための行為だったと思う。
それなのにもっと刺激的でもっと危険な遊びを覚えてしまった私にはオナニーは自分を慰める行為に過ぎないような気がしてきたものだった。


私は比較的、解放されていて本来ならば留守がちの主人と恵まれた生活をいい事に男のひとりふたり引っ張り込んで不思議じゃないかも知れないと思う。

何を基準にそんな事が正当化されてるのか難しいとこだけど、私はそんな煩わしい事もしたくないしそんないい男にも出会えなかった。

だから私はまた[知美]という女になって夜の町を徘徊する機会を心の中で膨らませる事にこの上ない刺激を愉しんでいたのだった。

… … … …

いつ実行するかなどはそれほど深い意味はない。
私は何気なく「知美」の化粧を鏡に向かいながら模索してるうちについ、ふらりと夜の街に出でしまったのだった。

時間も早い事だったので、しばらくは少し賑やかな繁華街を散策してみた。

今日、主人が帰宅しないという確証はない。
街で会っても主人はおそらく私と気づかないだろうがこの格好で帰宅すれば主人は何事かと思うだろう。

その時はその時…

今の私には三十二年間一生懸命生きてきた事がまるでお芝居のように気楽に感じるのだった。
それというのも「知美」という別人格のせいにできるからだろう。

辺りがすっかり暗くなってから、私はまたあの街角に舞い戻ってきた。
通りの向こう側には寂れた繁華街のネオンが相変わらずそこに浮かび上がっていた。

今日は日が悪かったのか人通りもまばらで向こう側に佇む女たちも少しすればすぐに引っ込んでしまったりしていた。

そこへ近づいてきたのは一見サラリーマン風。
クールビズというのかいつしかネクタイをしないスーツ姿が定着してしまっているがそれならばスーツを着てる意味もどうなのかと私は思う。

「お姉さんはフリーの人?」

「えっ?」

「どこかと契約してるのかな?」


男はそっちの方の人手が足りないから今日だけ手伝ってはくれまいか、報酬は支払うと言った。

私はすぐにアダルトビデオの撮影だと気づいたがこの「知美」メイクにはかなりの自信があったもので映画で私を見ても主人を含めてすぐに私と気づく人はいないと思い、興味本位に引き受けてしまったのだった。


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