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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・エザカール-24

「分かってねぇなあお坊ちゃん」
 もう一度、唇が重なる。
「レグヅィオルシュとバランフォルシュが恋人同士なのは、創世記をひもとけば堂々と書いてあるだろ。俺達がそうなったって、ちっとも不自然じゃあない訳だ」
 本来ラアトが得意とする神学での比喩に、ラアトの頬が赤くなった。
 確かに、創世記には綴られているのだ。
 四元素の精霊は互いを個体として認識する前にバランフォルシュとレグヅィオルシュ、カイタティルマートとマイレンクォードの組み合わせで恋に落ち、その関係は現在に至るまで継続されていると。
「しかし、まだ納得しないのか?いつまで深花にこんな顔させて恥をかかせ続ければ気が済むんだ」
 非難がましいジュリアスの言葉に、ラアトははっとする。
 ジュリアスと恋仲だと自分に納得させるために、深花はずっと体をまさぐらせている。
 そのために頬は紅潮し、切なげなため息をついては悩ましげにジュリアスへ体を擦り付けているのだ。
「それとも、この先を最後まで見たいのか?出歯亀も大概にしとけよ」
 片腕で体を抱き寄せると、ジュリアスは舌先を深花の唇に滑らせた。
 舌を受け入れようと深花の唇が開いたのを見て、ラアトは真っ赤になる。
 深花の反応からして、ジュリアスと何度もそういう関係を結んでいる事は歴然としているが……こんなものを見せられるのはさすがにきつい。
「いえ……結構です。本日はとにかく謝罪のために訪問しましたから……お手間を取らせてしまい、申し訳ありませんでした」
 急ぎ足で、ラアトは部屋を出ていった。
 ラアトが座っていた椅子に、フラウがへなへなと腰掛けた。
「何だったの……あの子」
「回心したのは結構だが……意見が変わりすぎて扱いにくい存在かぁ」
「つうか露骨にこいつ狙いの男って……面倒じゃないか?」
「ふにぃ……」
 深花の様子を見て、ティトーが顔をしかめた。
「お前、やりすぎだろ」
「だいぶ加減はしたんだぞ、これでも」
 不本意そうに、ジュリアスは反駁する。
「ラアトが納得しなかったからなぁ……」
 ティトーは、肩をすくめた。
「おい、深花……改めて確認しておくが、ラアトと恋仲になりたいとは思ってないんだな?」
 腕の中でとろとろに溶けている深花へ、ジュリアスは尋ねる。
「あ、当たり前じゃない」
 色っぽく震える声で、深花は答える。
「彼の事が、まだ信用できないもの……」
 自分を排除しようとしていた人物がいくら回心した所で、おいそれと信用するほどにはさすがにお気楽ではない。
 猜疑心が芽生えるのは一個人としては結構な事だが、人間としては少し寂しい事だった。
 不意にジュリアスが、耳元に口を近づける。
「体、余計に燃え立たせちまったが……一人で何とかできるか?手伝った方がいいか?」
 ラアトに見せるための愛撫が行きすぎて深花の体がすっかり発情しているのは、反応から分かった。
 だから、必要ならば手伝うとジュリアスは申し出ていた。
「うー……」
 とりあえずジュリアスから離れようとした深花は、全身に力が入らない事に気づく。
「迷惑じゃなければ手伝って欲しい、かな」
「迷惑だったらこんな事は言い出さないだろ?」
 くすりと笑って、ジュリアスは立ち上がった。
「んじゃ、用件は済んだし俺達は退散させてもらうぞ」
 深花を抱き抱え、ジュリアスは部屋を出ていった。
 二人が出ていってしばらくしてから、ティトーは呟いた。
「お前、意外に嫉妬しないのな」
 出ていった二人がこれから何をするのか、フラウにも分かるはず。
 それなのに、フラウは二人を全く引き止めようとしない。
「だって、深花が可愛いんですもの」
 ティトーにとって答にもならない答を、フラウは返す。
「ジュリアスが深花を構うのは、性分だから仕方ないしね」
「ああ見えて、保護欲旺盛だからな」
 くつくつと、ティトーは笑った。
「ジュリアスはあたしを女扱いしてくれる。けど、その先に進む気はない……あたし、心底深花がうらやましいわ」
 神機搭乗後のケアという名目の元、二人は何度も肌を合わせている。
 それが、フラウはうらやましくて仕方なかった。



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