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七ノ森学園♂♀騒乱記 -咲けよ草花、春爛漫-
【性転換/フタナリ 官能小説】

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-続・咲けよ草花、春爛漫--1

1. ボーイ・ミーツ・???

「……ふぃー、到着っと」
神社の石段を登り終え、息をつく。爽やかな朝の空気は澄んでいる。俺はその空気を思い切り吸い込み、少しだけだるくなった両の足を振るいながら社へ向かった。
ジョギングは毎朝の日課だ。
これは中学校の時から変わっていない。親父に叩きこまれた習慣だが、走ること自体は好きなのでずっと続けているのだった。寮生活を初めてからも毎朝のジョギングは欠かしていない。
そしてこのジョギングコースに、例のお参りは含まれていた。
「お願いです神様仏様俺をどうか男の姿に戻してください」
神社は古くそして小さく、まるでもう廃れて幾年も経っているように思えたが――廃神社だからこそここで歓迎会をしたと思っていたのに――、どうやらまだ神様を祀っているらしい。
誰が手入れをしているのか、小さな社はそこまで埃が積もっておらず、比較的新しい紙垂が下がっていた。
「それでできることなら男に戻った時にもうちょっと身長伸ばして筋肉つけてくださいあと×××ももう一センチでもいいからデカくしてくださいそれから」
今日はいつもより少しばかり長めに祈願し、深く頭を下げる。
このお参りも、もう今日で何日目になるだろう。一向に男に戻る気配はないが、そもそも女になったのも徐々に変化していったわけではないので、いつか急に戻るのだろうと思い込んでいる。
女になった原因が、本当に神様が怒ったからなのかは分からない。
けれど、俺はとにかく藁にも縋りたい一心で毎日のお参りは欠かさなかった。
……まあ、毎日お参りしてるんだ。少しくらい、プラスアルファの祈願したって、罰は当たらないだろ?


「あー、腹減った」
寮へ戻った俺はそこで、やはりジョギングから戻ってきたらしい男子生徒の姿を見つけた。
ガタイのいい、黒髪の短髪。見たことない奴だ。一年だろうか。
捲くられたTシャツの袖からしなやかな筋肉が覗く。タオルで汗を拭って大きく息をつくその姿に思わず見惚れる。
(くそ、ガタイがいいだけで絵になるもんだ)
自分の貧弱な身体と比べてみると落ち込んでしまう。
「!」
男子生徒は俺に気付くとはっとしたような顔で俺を見やる。しかしすぐに視線を逸らして走り去ってしまった。
一体どうしたんだ。
(あ、女子寮と間違えたと思ったか?)
二年と三年は事情を知っているから、俺を見ても何とも言わない。しかし、一年からしてみれば男子寮に何故女子がいるのか不思議だろう。
ここ数日、寮で一年生らしき男子生徒にぎょっとされる日々が続いていた。
「可哀想なことしたな」
走り去って行った彼は、女子寮へ向かったのだろうか。そうだとしたら、今頃困惑しているに違いない。
そして、俺は俺で何故かその男に見覚えがあるような気がしていた。
しかしあくまで見覚えがあるような、という程度で、それ以上は思い出せなかった。
「まあ、いいか」
俺はいつも通り、クールダウンに軽いストレッチをこなしてから寮室へと戻った。
今日の朝メシ何にしようかなとか、そういえば今日の放課後は新歓だなんて他愛ないことを考えながら。
(新歓、ね)
本好き文芸好きはほぼ文学部に持って行かれることは必至だが、それでも何とか来年も部を存続させることができるくらいの人数は欲しい。藤村先輩のことはもちろん、何より仲間はたくさんいた方が楽しいだろう。
「そうと決まりゃ、改めて新歓頑張りますか」
誰にともなく、俺は晴れた空に向かって言った。



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