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一枚の写真
【初恋 恋愛小説】

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ヒロ兄ちゃんとユキ姉ちゃん-15

母が遅い昼食の用意をしている時、父が飛び込んで来た。
「大変だ!!ユキちゃんが....ユキちゃんが....」
「落ち着いて下さい。ユキちゃんがどうしたの?」
「ユキちゃんが事故にあったそうだ!!」
「えっ?」
母は持っていた茶碗を落とした。
「そっそれで、ユキちゃんは?」
父は頭を横に振った。
「今ユキちゃんのお父さんから電話があって....裕貴君に連絡を取りたいのだけど、どこにいるかわからないそうだ。お母さんの話では待ち合わせの場所で待っているんじゃないかって....どこか知らないか?」
母は頭を横に振った。
「私知っているよ!」
父と母が私のほうを見た。二人は同時に、
「どこ!」
私に聞いた。
「駅前の花時計の前だって言ってたよ!!」
「駅前の花時計の前だね!わかった!」
父が出て行こうとすると母が、
「待って!お店があるでしょう!私が行きます。美香いい子にしててね!」
そう言い残して走って行った。
母が戻って来たのは9時過ぎだった。父は今日店を開けていられる状態じゃないからと、早く店を閉めた。母が戻るとすぐ、
「どうだった?」
父は母に尋ねた。母は目に涙を溜めていた。母が聞いた話によると、ユキ姉ちゃんはよほど急いでいたのか、赤信号に変わる直前の青の点滅信号を無理して渡ろうとして、同じように無理して渡ろうとした左折して来た車とぶつかったそうだ。ユキ姉ちゃんの家族が病院に着いた時はもうユキ姉ちゃんは亡くなってしまっていたそうだ。
「....裕貴君は.....」
「見ているこっちがつらくなるくらい落ち込んで....ユキへのプレゼントを忘れたりしなければ....と自分自身を責めて....見ていられなかった.....」
母はつらそうに話した。携帯電話が普及している現在なら多分この事故は起こらなかっただろう。「あと何分で着くから」と電話なりメールなりすればいいのだから.....固定電話しか無かったあの当時外出先からの連絡手段は限られていた。公衆電話から店に電話する事も出来たが、店が忙しいのに個人的な電話をするのは出来ないので、ユキ姉ちゃんは店に来る事にしたのだろう。悲劇はいつも、幾つかの偶然が重なって起こる。ユキ姉ちゃんが待ち合わせの場所でずっと待っていたら...ヒロ兄ちゃんがプレゼントを忘れなかったら...ユキ姉ちゃんが無理して交差点を渡ろうとしなかったら...車の運転手が安全を確認していてくれてたなら...こんなタラ・レバが一つでも起きていたら事故は起こらなかっただろう。私の父と母もあの時無理してもヒロ兄ちゃんを帰らせていたら....と後悔していたようだ。その時の私は父と母の会話よりもビデオアニメに夢中になっていた。



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