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百獣の女王
【ファンタジー 恋愛小説】

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百獣の女王 T-2

披露宴が閉会して2次会が始まった。

全体的にくだけた雰囲気になり、そこここで大きな笑い声が聞こえるようになった。

そんな中、「あ、マダオだ!!」と小さな女の子が俺を指差した。

「あのさ、沙季ちゃん。何度も言ってるけど俺の名前は草太郎だからね。そ・う・た・ろ・う」

「うるさいマダオ!!」

沙季ちゃんは聞く耳を持ってくれず、俺の足を蹴飛ばすとどこかへ走って行ってしまった。

あの子は俺の姪で基本的に人見知りする大人しい女の子の筈なのだが、俺が相手だと何故か攻撃的になる困った子だった。

ちなみにマダオ、とはまるで駄目な大人(あるいは男)を意味している。さまざまなバリエーションがあり、沙季ちゃんはとあるアニメを見てこの言葉の使い方を覚えてしまったらしい。

「本当にすみません。草太さん」

やれやれと苦笑する俺に謝って来たのは義姉の正美さん。沙季ちゃんの母親である。

この人は、いやこの人に限らず真村家の人間は俺のことを草太と呼ぶ。

「いえいえ。元気があって良い子ですね、本当」

ちょびっと生えた歯で噛みついてくる子猫みたいで可愛らしいことは可愛らしいのだが、ちょっとばかり元気すぎる気がした。

「あの子、いつもは大人しいのに草太さんの前だといつもああなの」

「どうしてでしょうね?」

「もしかしたら草太さんのことが好きなのかも知れないわね」

「ははは、それはありえないでしょう、絶対」

断言できる。

「そうそう。あの子は自分より弱いヤツにしか強気になれないシャイな子なのよ」

突然横から俺を小馬鹿にする声が聞こえてきた。俺はその声に思わず、

・・・げ

っとなってしまう。

「何その、げって顔は、んん?」

ガシッ!!

(滅相もございません。会えて嬉しいです)

そう言おうとしたが、俺はくぐもった声しか出せなかった。


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