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階段を上る時
【その他 官能小説】

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階段を上る時-3

先ほどまでの明るい背景だったチャットとは違い、2ショットチャットは黒をベースにしたちょっと暗めのページとなっていた。先に待機していた悠斗がキララの到着を待ちわびていた。数分後、彼女が彼の元へ訪れた。先ほどまでとは違い二人だけのチャットである。悠斗は率先して口を開く。その会話の始めに、キララが思いもよらない発言をしたのだった。簡単挨拶を交わすと、彼女が言った。
「誘ってもらったとき、本当は嬉しかったんです」
悠斗にとっては意外な言葉であった。彼は彼女に好意を抱いていたが、彼女の気持ちは分からなかった。この2ショットに誘ったときも、半ば強引であった為、あまり良い印象を与えていないと思っていたのだ。それが実は彼女にも喜ばしいことであったとは、彼にとっては嬉しい限りであった。その言葉をきっかけに、悠斗の気持ちは彼女に開かれていったのだった。しかし・・・悠斗には引っかかることがあった。実は自分が結婚していることを、まだ彼女には告げていない。悠斗にとってみれば今日知り合ったばかりの子に、自分のプライベートまで話すことは無いだろうと思っていたので、問題ないと思っていたのだ。しかし・・・互いは話が進むにつれ、心が通い合っていくのが分かった。年齢は10歳も離れているが、歳の差を感じることも無く、今日初めて会った人とは思えないほど親しみを感じあっていた。互いの容姿、生活環境などまるで知らない二人が、ここまでなぜ惹かれあうのか・・・運命と言ってしまっても良いのではないかと思えるほどであった。そんな思いに悠斗は浸っていた。その時・・・キララは口にした。自分の想いを・・・そして過去を・・・。
「悠斗さんは優しい。悠斗さんみたいな人に抱いてもらいたい」
余りに唐突で意外な発言であった。悠斗は戸惑った。戸惑いとは裏腹に心の中は喜びで満ちていた。自分が好意を持っている相手に、抱いて欲しいと言われて嬉しくない男はいないだろう。しかし突然抱いて欲しいと言われたことに、疑問を感じていた。一息置いた後、彼女はさらに言葉を続けた。
「私の体は汚れてしまっているの・・・私は過去にレイプされたことがあるんです。悠斗さんみたいいに優しい人に抱いて欲しいの。過去を忘れさせて欲しいの・・・」
悠斗に衝撃が走った。キララが自分に抱いて欲しいと思っている事実。そして彼女が大きな傷をもっている事実。彼女に感じた何かとは・・・性に対する後ろめたさ。それがなぜなのか彼にはようやく理解が出来た。そして自分に走った衝撃が物語ること・・・それは自分もキララに大きな好意を持っているという事。それは大きな感情であった。すでに恋愛感情に近いものまで感じていた。彼女の告白を受け、彼も自分が結婚している事実を隠しておくことが出来なかった。
(俺が結婚している事実をここで話せば・・・彼女は自分から遠ざかっていくだろう)
正直、話したくは無かった。彼女の心を自分に繋ぎ止めておきたかった。しかし、それはあまりに卑劣であり、彼女に虚言を吐くことは彼にとって苦痛でも有った。彼は意を決し、彼女に全てを話した。
「実は俺、結婚してるんだ・・・」
(終わったな・・・・)
彼の中でこの出会いが終わってしまったと感じた。彼女もまた
「そうだったんだ・・・」
彼女からの応えはその一言だった。口を開くのが重かった・・・。でも今の自分の気持ちを伝えておかなくては、きっと後悔する。彼はそう感じ取っていた。後悔はしたくない。その想いが彼の口を開かせていた。悠斗は自分の想いを全て彼女にぶつけた。自分は結婚しているが、キララに対する気持ちに嘘偽りは無い。傍から見れば、ただの虚言にしか見えないかもしれないが、彼は本気で彼女を好きになってしまっていたのだ。そして・・・彼女は答えた。
「自分も悠斗さんのことが好き。結婚していても抱いて欲しい。私の傷を癒して欲しい・・・」
彼女はこう続ける。
「私の名前は遥奈(はるな)。私は汚れています・・・。それでもよければ抱いて欲しい・・・」
悠斗は予想外の展開に戸惑いながらも、遥奈にこう告げた。
「貴女は汚れてなどいない。本当に汚れているのは、人の心を踏みにじり自己満足に陥っている輩の事。遥奈は今、立ち直ろうとしている。本当に汚れているなら、立ち直ろうとする想いなんて生まれない。だから俺は貴女を応援したい。貴女を好きでいたい。そして貴女を抱きたい・・・遥奈に女性としての幸せを感じさせてあげたい」
彼の精一杯の言葉だった。嘘偽りの無い、真実の気持ちだった。遥奈の幸せのために自分に何が出来るのだろう・・・。同時、疑問も湧き上がってきた。だがその答えは彼女の声によって答えが導き出された。
「近いうちに私と逢ってくれませんか・・・?」
悠斗に迷いは無かった。
「俺でよければ喜んで」
二人の想いが一つの線となって動き始めていた。


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