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階段を上る時
【その他 官能小説】

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階段を上る時-2

《女性待機チャット》
彼のイメージでは話をしたい女性が待っているチャットと言うイメージで、一番アダルト色が薄いと感じた。彼は特に性を満たそうと、ここへ来たわけではない。ただ話し相手が欲しい一身で来たのである。しかしそこは男である。どうせ話すなら異性と話したいというのが本音でもあった。少し戸惑いながらもチャットのコーナーへ入ってみると、すぐに一つのチャットが目に入った。他のチャットは1対1で話す設定になっているのに対して、そこのページだけは多人数で話す設定になっていたのだ。題名も「雑談」になっており、彼にとっては丁度良い設定である。迷うことなく、チャットへ潜り込む。どうやらこの部屋を作ったのは女性らしく、ハンドルネーム(以後HN)を「キララ」といった。HNとはインターネット上で使用するペンネーム(仮想の名前)である。悠斗にとって、キララと言う名前が懐かしく感じた。まだ20代前半だった頃、彼はとあるホームページの管理者をやっていたのだが、その時頻繁にメールをやり取りしていた子のHNも、キララという名前であった為、妙な親近感を覚えたのであった。彼がチャットに入ると、設定人数6人はあっという間にいっぱいになってしまった。どうやらここのホームページはかなりの人気サイトらしいということが窺える。中には余りに露骨な表現をする人がいる為、チャットを開設したキララが話をしながら、マナーの悪い人を強制退出される姿が見受けられた。話は多少のアダルト会話から、日常会話まで及んでいった。悠斗は色々な話をしながらも、なぜかキララが気になっていた。彼女の話し方や感受性が、彼は気に入ったのだった。彼はそんな素振りを見せることも無く、チャットという部屋に集まった仲間と楽しい一時を過ごしていた。久しぶりの若者たちとの会話に少し戸惑いながらも会話をしていると、キララの会話がふと止んでしまったのだ。悠斗は無性に気になった。なにか用事ができたのだろうか?とも考えたが、なぜかキララがいなくなってしまうのが寂しかったのだ。自分でもなぜそう思ったのかは分からなかった。悠斗は真っ先に、『キララ、どうしたの?』と声を掛ける。それに乗じて他のメンバーも声を掛けた。キララから返事が来たのは数分後のことだった。キララは『私、話題持ってないから・・・』というとしばらく黙り込んでしまった。他のメンバーも多少は彼女に気を掛けてはいたが、他の人たちとの会話に夢中になっていた。そんな中、悠斗は自分の気持ちに気が付き始めていた。(俺はキララの事、気に入っているのだな)と・・・。悠斗は過去にそれなりの恋愛経験を積んできていた。実はバツイチ・再婚済みという経歴持ちである。その為、自分のキララ気持ちに気が付くのが早かった。顔も姿も知らない彼女に何か感じるものが有ったのだ。彼女は何かを抱えている、何かを求めているそんな気がしてならなかった。
 
 その後も彼女は発言も無く、ただマナー違反者を部屋から追い出す作業のみをこなしていた。違反者追放は部屋の開設者のみにしか出来ないことだからである。悠斗はこの時あることを思い出していた。(確かここのチャットには2ショットチャットがあったはず・・・)2ショットチャットとはその名の通り、男女(稀に例外は有るが)が1対1で話が出来るチャットのことである。悠斗に迷いは無かった。2ショットチャットの空きを確認すると、『キララ、もし良かったら俺と二人で話しない?』とキララにとっては唐突とも思えるタイミングで誘いを掛けた。彼にしてみればかなり大胆な行動であった。日ごろの悠斗はさほど積極的ではない。寧ろ消極的なほうであるかも知れない。一息置いたタイミングで彼女から返事がくる。『私とですか?』誘われたキララが自分でいいの?と聞き返してきたのだった。彼女からして見れば話題性も無い自分を、なぜ二人で話そうかと誘う悠斗の気持ちが理解出来なかったのだろう。間髪入れず『もちろん。貴方と二人で話がしたいんです』と悠斗は答えた。他のチャットメンバーから悠斗に冷やかしの言葉が飛ぶが、どれも善意に満ちたものであった。『悠斗はおっぱい星人だからキララちゃん気をつけてね!』一緒に話をしていた10代後半の女性が煽り立てる。キララは少し戸惑いながらも、悠斗の誘いを受けたのだった。


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