投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

God's will
【その他 官能小説】

God's willの最初へ God's will 62 God's will 64 God's willの最後へ

GOD-3

 ドアの中には長い光のトンネルが続いている。僕は腕に赤ん坊を抱きしめたままふわふわと浮遊しながら前に進む。赤ん坊はしばらくの間泣き続けていたが、やがて泣き止んだ。そして僕の腕の中ですうすうと寝息を立てて眠ってしまう。

 僕は心の中で、もしルカを選んでいたら今頃はルカと手をつないでこの光のトンネルを一緒に越えたのだろうかと考えている。でも、恐らく僕はルカを選択することはなかっただろうと僕は思う。あの選択は、僕に対する選択でありながら、僕ではないほかの意思が働いていたような気がしてならない。それは、僕が選んだ答えでありながら、僕の意思はそこにはほとんど含まれていなかったように思う。何故なら、あれは僕にとって究極の選択であったし、そもそも、きっと人間には命に関わる選択なんてできないようになっているのだと思う。そして、それはきっとしてはいけないのだと思う。人は人を裁き、人は時に人に罰を与えたりもするが、一体その中のどれだけが正しいことなのだろう。一体その結論のどのくらいが本当に正しいのだろう。人が人を裁くことと、人が人を赦すことは、一体そのどちらが正しいのだろう。僕には分からない。だから、僕が選んだ結論だって、きっとそれは僕ではない他のどこかからもたらされたのだろう。僕はそう思う。だから、それは、僕ではなく、他の誰でもなく、きっとルカの神意だったのだろう。何故ならば、ルカは母親であったし、きっとこれからも母親であり続けるだろうからだ。例え近くにいなくとも。その存在をいつだってルカは胸の中にずっとひっそりと、でもしっかりと秘めて。



 裁くことと、赦すこと。そのどちらが正しいのか僕には分からない。

 でも、僕の中の神様は、きっとルカを赦している。

 ルカの間違いを赦している。そして、その間違いを少しでも正しい方向へ向けたいと思う。そしてそれはきっと、僕にしか出来ないことなのだ。



 目が覚めると、僕は自室のベッドの中にいる。見覚えのある天井。ホームセンターで買った、安物のカーテンを眩しい陽光を透きぬけている。その光に、僕はここが現実の世界なのだと知る。随分と長く眠っていたみたいだ。頭がまだぼんやりしていて、僕はなかなか体を起こせずにいる。ひょっとしたらあれは長い夢なのではなかったのだろうか、と僕は思う。随分と非現実的な世界だった。あんなことが現実にあるはずがないんだ。でも、だとしたら一体どこからどこまでが夢だったのだろう。

 そう思いながらようやく体を起こし、僕はそれが夢なんかじゃなかったことを知る。僕はあの世界にいたままの裸で、何一つ身に着けていなかった。あの衣服は今もまだあの静止した世界にあるのだろうか。結構気に入って長い間愛用していた衣服だったから、僕は少し残念に思う。でも、それでいい。僕は自分の身にまとっていた衣服を失うことによって手に入れたものをこれからも大切にしていこうと思う。それから、僕の隣にはすうすうと寝息を立てている赤ん坊の姿があった。それは、僕があの静止した世界から連れ帰った赤ん坊に違いなかった。僕はしばらく赤ん坊を眺めていた。ふむ。赤ん坊って、一体どうやって育てるんだろう。それに、赤ん坊の寝顔も特別可愛いっていうわけじゃない。鼻も潰れているし、ほっぺたは膨らみすぎているし、泣くとうるさいし。でも、僕はあの世界から連れ帰ったこの赤ん坊をちゃんと育て上げなければならない。それなりに上手くやっていかなければならない。


God's willの最初へ God's will 62 God's will 64 God's willの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前