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God's will
【その他 官能小説】

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Door in rest room-2

 階下へ行って、一度も会ったことのない宮下勉君の祖母の部屋へと続く襖をそっと開けてみるが、そこに祖母の姿はない。まるで世界中の人間が僕を独りぼっちにしてどこかへ行ってしまったんだという不安に押しつぶされそうになる。そして、僕は見る。一階の居間の窓の外に首吊り死体があるのを。一体ではない。無数の首吊り死体がそこにはある。正確な数をカウントするのが躊躇われるほどの多くの死体。宮下勉君としての<僕>が見たのと同じ、あの光景が現実に目の前にある。落ち着け、と僕は自分自身に言い聞かせる。

いいか? お前はこの世界へ来るのはこれで二度目なんだ、と僕は自分自身へ向けて言う。混乱するな。お前はこういった世界が存在することをすでに知っていたんだ。そして、明日になれば自分の足でその世界へ行く気だったんだ。

どこかで何かが間違ったせいでほんの少し早く僕はこの世界へやって来たに過ぎない。僕を招待している誰かさんは、随分とせっかちな野郎だ、と僕は強がりにも似た感じで呟く。

僕にとってのこの世界への入り口は、バンゴベではなく宮下勉君の実家のトイレのドアだった。それならば、僕の目的地はバンゴベではないという事になる。それならば、一体どこなのだろう。僕はとりあえず外へ出てみる。風は吹いていない。頭上を見上げると、青紫の空がどこまでも続いている。僕の知る世界の夜よりも、一層濃密な闇が辺りを包み込んでいる。街灯は全て消え、淡い月の光が一定の照度を保ったまま世界を照らしている。星は一つもない。

 そういえば、宮下勉としての<僕>が訪れた、あの洞窟はどうだろう、と僕は思う。<僕>にとってはあの場所が正に最終地点だった。僕の場合も同じとは限らないが、どうせ行く宛てもない。僕は由香さんの言葉を思い出す。



「あなたが自分の意思で決めるの。あなたの行き先は、他の誰でもないあなた自身に託されているの」



 僕は僕自身の意志で、とりあえずバンゴベの洞窟を目指すこととする。


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