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冬の日の出来事。
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その後の出来事。-5

「お前何考えてんだ!」

ほんとだよ。何考えてんだ、あたし…。

「こんな事して、俺を痴漢に仕立てあげるつもりか!」

違うわ、バカ。

「お前、さっきからおかしいぞ。どーした?」

おかしい事くらい分かってる。ていうか、年中おかしいお前にだけは言われたくない。

「つぼみ?」
「…」

優しい低い声。
このトーンで呼ばれるのが一番好き。
胸の奥がきゅんと鳴ってざわざわと騒がしくなって、嬉しいはずなのに、いつも泣きそうになる。

「首、痒いのか?」
「…」
「寒い?」
「…」
「つぼみ」
「何で」
「え」
「何であんたの欲しいものはあたしじゃないの?」
「………へ」
「何であたしじゃ駄目なの?」
「つぼみ?」
「あたしはずっと朋久が…」

言いかけて、でもそれ以上言えなくなって走った。車に乗り込んでエンジンをかけてバックミラーで確認しても、朋久は追い掛けてくる素振りも見せずにその場に立ち尽くしてる。

終わったんだ…

そう確信した。
あたしの長い長い片思いが、今終わった。

家に着く頃には涙はすっかり乾いていた。
ただ、家族にも見せられないほどメイクはぐしゃぐしゃで、それがさっきまでの自分の痴態と重なって悲しくなる。

追い掛けないというのが朋久の返事なんだろう。

やけくそとは言え、やるだけやった。
気持ちも伝えた。
結果駄目だったのだからこれ以上何をしても悩んでも無駄な事。

床に脱ぎ散らかしたフォーマルのワンピース。これだって、朋久に見てほしくて奮発して買ったのに。
結局それも無駄だったって事か。

あぁ、駄目だ。
頭から離れない。
そりゃそうだよ、20年以上も好きだった相手を1時間かそこらで忘れられるわけがない。
あんなしょうもないバカよりいい男なんてそこら中にいるのに、それでも朋久がいいって思えるあたしはかなり重症かも…

『♪♪♪♪』

気分に反して明るい着メロが部屋中に鳴り響いた。音の方に目をやると、ワンピースの上にほったらかしにされてる携帯が小さなイルミネーションを点滅させてる。

人と話す気になんてなれないんだけど…

仕方なく手に取った携帯を開いて、

「げ」

ディスプレイに表示されたその名前を見て思わず呟いた。


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