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冬の日の出来事。
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その後の出来事。-9

「つぼみ」
「…帰る」
「へ」
「どこに送ればいいの?実家?アパート?」
「あ、実家…」
「ん」

外したシートベルトを装着し直して、行き慣れた朋久の実家を目指した。
帰り道、あたしは何も話さなかった。
同じように朋久も一言も話さない。
何を考えてるのかな。
あたしはどうしたらいいのかな。
これからあたし達はどうなるのかな――…




「はい、到着」

結局無言のまま着いてしまった。
朋久の実家の門扉の前に車を停めてハザードを焚いて…

「…降りないの?」

と、こっちが聞きたくなるくらい朋久は腕を組んだままピクリともしない。

「ここ道狭いんだから早く降り」
「つぼみ」
「何」
「好きって言われたから好きになるって駄目か?」
「…………は?」
「それってずるい?調子良すぎ?」

何言ってんだ、こいつ。
いきなり何の話だ。
好きって言われたから好きになる?
そんなん調子良すぎに決まってんじゃん。
あたしが好きって言ったからあたしを好きになるって事?
…好きになるの?
あたしを?
朋久が…

「…調子良すぎ」
「やっぱそうか」
「そうだよ」
「だな」
「でも」
「うん」
「考えとく」
「…うん」

曖昧な告白。
曖昧な返事。
でも朋久は笑っていた。
あたしは上手く笑えなかった。



「ただいまー」
「遅かったじゃない、つぼみ」
「え?」
「つむぎが二次会行く前に寄ってくれてね」

母親がくれたのは、つむぎが持っていたブーケだった。

「ウェディングドレス用のは記念にとっとくから、カラードレスの方をあんたにって」
「あぁ、そう。ありがとう…」
「ちゃんとつむぎに言いなさいよ」
「はーい」
「あんたも早く一人に絞りなさいよー」
「はーい…」

貰ったブーケを片手に、とんとんと一段ずつ踏み締めるように階段を上がった。
まるでチャペルへ向かう花嫁のように。

あたしにもいつかこれを持ってあの華やかな舞台に立つ日が来るのだろうか。
その時、隣にはあのバカがいるのかな。

今日の空のようなサムシングブルーのブーケにそう願をかけずにはいられなかった。


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