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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨5¨-3

「うわー!うわー!」
「足つくぞ、立ってみろ」
「うわー!あ、ホントだ。ふう・・・びっくりした」

それを見て織田さんと葉川さんがお腹を抱え笑っていた。
もう・・・いきなり変なとこ見せちゃったよ。
泳ぐのは昔から苦手だった。だから僕が怖がるのも無理はない。
実は泳げるんだけど水に対する苦手意識はなかなか無くならないから困ってしまう。

「すごいね成敏くん、カナヅチなのに水に入れるんだぁ」
「いや、底があれば立つのはできるだろ」
「私もやってみようかな。せーの・・・えい!」
「は、葉川さん?!」

止めようと思ったらもう水しぶきが散っていた。
そして、僕と同じ様に暴れてから立ち上がり、顔をふいている。

「けほけほ・・・びっくりしたー」
「あんたカナヅチでしょ?なんでいきなり飛び込んだのよ」
「成敏くんも泳げたから私もできそうって思ったの。でも難しいねー」

笑っている葉川さんを心配そうに見ている織田さんと賢司。
少し変わった子だとは思ってたけど、相変わらず行動が不思議すぎる。

「うわっ?!冷たい!」

振り向くと妹尾さんが笑っていた。どうやら彼女が僕に頭から水をかけたらしい。
ちょっと前まで向こう岸に居たのにもう僕の近くにいる。本当に泳ぐのが速いな。
速人はまだ追い付いてないみたいなのに。

「やったね、お返しだよ!」
「きゃっ!冷たーいっ!」
「ちょっと成敏、こっちにかかったでしょ!こいつー!」
「わぷっ!お前、何で俺にぶつけんだよ。分かった、こうしてやるからな」
「ひゃああ!もう賢司くん、何するのー」

僕のかけた水が織田さんにもかかったのがきっかけで、連鎖的に水掛け遊びが始まった。
的が大きいせいか僕より賢司にばかり当たっている。
楽しい、まるで小学生に戻ったみたいだ。
もう大学生だけど、夏休みだしたまには幼少に戻るっていうのもいいよね。

「はあはあ、やっと追い付いた。遥、揉ませろやぁぁ!」
「ケダモノは退治しろー!退治だー!」

息切れしながらやってきた速人は、女の子達に一斉に水を浴びせられ、更に藻掻いている。
その姿が面白くて賢司と僕も参加した。

「おっおまえらやめろ、こっちは泳いで疲れ・・・うぷっ?!鼻に入った、うげぇほっ」

集団というのは時に残酷だと僕は思う。
水掛けにも飽きて、次はウォータースライダーで遊ぶ事になった。
見上げた時はそんなに高く見えなかったけれど、階段を上がるにつれて・・・

「なんか高くない?」
「そ、そうだね・・・ちょっとね」

妹尾さんがさっきより大人しくなっていた。僕と一緒で高いところが苦手なのだろうか?

「じゃあ、行ってくるね」

織田さんは言うと同時に勢いよく滑っていった。
水が流れる滑り台を突っ切っていく姿は、僕よりも男らしかった。
着地した所から満面の笑顔で手を振っている。


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