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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨4¨-4

弥生は「速人?やめてよ、あんなその場しのぎの言い逃ればかりな奴、有り得ない」って言ってたし
杏子は「賢司くん?喋り方ちょっと怖いし、ああいう人苦手かも・・・」なんて言ってた。


でも、こうして互いの相手の事を話している表情は、とっても嬉しそうだ。
似合いの組み合わせだと思う。

「速人さあ、ゼミは寝ない様になったんだ。あたしが煩く注意したからその気になったのかな」
「そうだよー。弥生、怖かったもん。あれは普通の人なら登校拒否しちゃうよー」
「ついムキになっちゃってさ・・・でも、やれば出来るんだねあいつも」

なんだか、複雑な気分だった。
弥生のこんな嬉しそうな顔はあまり見たことない。
いつもぶっきらぼうっていうんじゃないけど、人を誉めたり笑顔を作ったりするのが苦手なのだ。

「賢司くんって頼りになるんだよ。私が迷ってると代わりに決めてくれるの」

杏子は・・・まあいつも笑ってるし、表情は変わらない様に見える。
喜怒哀楽じゃなくて喜喜楽楽って感じだし、怒ったところは今まで見たことない。
弥生も杏子も高校からの付き合いだけど、喧嘩した事は殆ど無かった。

私達はバランスがいいんだ。
3人という形でうまく調和してるんだ、と思っていた。


「それで、遥は」「成敏くんとはどうなの」


うん私は2人と違って特に進展なし・・・


「って、ど、どうなのって、なに?!」
「だから、どうなのよ。一緒に遊んだりしたの」
「教えなさいー。順番順番!」
「なっ、何もしてない・・・けど」

弥生と杏子は同時に眉を上げた。
せっかちとのんびりが、動作のタイミングが合うなんて。

「やっぱり。成敏って自分からいくタイプじゃないかんね」
「遥もそういうの苦手だもんねー。でも、入学式の日に」
「それはいいって!マジでどうにかなりそうだったの、だから・・・」


忘れない。忘れられない。
携帯を無くしたのに気付いたのは満員電車で一息ついて、外に出てからだった。

すぐ近くに交番があったのに気付いたのは、入学式の後だった。

ずっと肌身離さず持っていた物を落として、もう入学式も始まるっていう状態で、冷静でいられる人はいるのかな?
あまりのパニック状態でコンビニに居た成敏くんに声をかけた。

まさに藁にも縋る想いで、携帯を拾ってる事を信じて・・・

実際には速人くんが拾ってくれてたけど。



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