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やさぐれ娘は屋上で笑う
【学園物 恋愛小説】

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#02  研修旅行――初日-4

本名、竹下秀次郎(タケシタ シュウジロウ)。

栗毛にノンフレームのメガネをかけたヒョロい三十前の優男だが、この学校の教師にしては緩い。悪く言えば情熱がないんのだろうが、教師なんぞ、それぐらいで良いと私は思っている。つまり、私のような生徒に好感を抱かれる教師=一般的にあまり評価されない教師ってことだけれど……。

まあ、そんな竹下だから私と岐島が班を組むことを不思議がったけれど、深くは追求せず、終業式のHRで1―Bは五人の班を五つ、四人の班を三つ作ることを発表し、私(と岐島)は晴れて気まずいボッチの身の上を回避できたのだった。

班は私と岐島の他に女子が二人、学級委員長の林田尊(ハヤシダ ミコト)とその友人である相原柚子葉(アイハラ ユズハ)が加わった。



林田尊は、もう一目でお利口さんですって面の女だ。身長は百五十五くらいか?私と大差ない。黒髪を低いところでツインテールにし、気の強そうな逆ハの字の眉と吊り目、鼻は高くはないが、形は悪くはない。けれど化粧っ気がなく(校則違反なので彼女にとっては当然だろうが)、色白で取っ付きにくく、どこかモッサイ。

そして、彼女がウチの班に編入を望んだ理由も予想できる。彼女は一年のくせにすでに生徒会執行部に立候補、書記を行っており、要は私の姉、香織に頼まれたのだろう。または自主的に香織への覚えを良くしようって魂胆かもしれない。

可愛そうなのはそんな必死な学級委員長さまに道連れを喰らった哀れな友人、相原柚子葉だ。

彼女はテニス部所属の寡黙な女だが、まあ、身体付きだけは大人しくない。身長は百七十五くらいはあるだろうし、その日に焼けた四肢は出るところは出て引っ込んでいるところは引っ込んでいる。なんか、外国のモデルみたいな体型だ。なぜだろう?訳もなくムカつくな、プロポーションの良い女ってのは。

ただ、そこを除けばどこにでもいる大人しい女子高生だ。地毛だろう、赤毛を耳に被るくらいのショートに纏めており、額は狭く、感情をあまり露わにしない薄い唇が印象的である。

相原は林田とは仲がよいらしく、林田がウチの班に入ると言い出したときに、自分も――、と手を上げたのだった。



そんな女子二人が私の右側に並んで座っている。左隣には岐島だ。

本日は研修旅行の一日目、現在、私たちは各クラスに一台ずつあてがわれた中型の観光バスで現地、鎌倉へと移動中である。



…………。気まじぃ。



私たち、六班はバスの最後尾、六人掛けの席を占領している。四十四人乗りのバスだ、クラスの人数だってギリギリなのにも関わらず、私たちの目の前の二人掛けの席は左右とも空いている。端的に言えば、避けられていた。

要は、遠足ムードの車内に置いて、この一番後ろの席一帯だけ孤立し、沈黙しているのだ。


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