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God's will
【その他 官能小説】

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狂気の夜-4

だが、重要なのは自傷行為即ちリストカットと自殺行為は全くの別物であるということだ。リストカットが原因で死んでしまうといったケースは極めて稀なことであり、例えば薬物乱用と併用してリストカットを行った際に、思いのほか深く傷をつけてしまい、出血がひどくて死んでしまう場合や、あるいは誤って動脈を傷つけてしまった場合などだ。それは故意というよりは事故といったほうが良い。リストカットの目的は孤独感や閉塞感や空虚感や精神的苦痛を紛らわせるところにある。言い換えれば、生きるためにそれをしている。

でも、そうだとするならば。僕は頭の奥にずきんとした痛みを感じる。それならば、ルカは死ぬことなど望んでいなかったのだろうか。いや、でも彼女は確かに僕に言ったのだ。殺してくれと懇願したのだ。だから、僕はルカを。

僕はぶるぶると頭を振って、それからルカの手首から拭き取った血で赤いタオルを持って、バスルームへ移動する。そしてシャワーを浴びると、幾分か冷静になる。そして、先ほどの感触がなくなるのを祈るようにしながら、石鹸でごしごしと手を洗う。指の間まで綺麗に洗いながら、僕はルカを殺したのが果たして正しいことだったのだろうかと考えている。それが本当に彼女の望んだ事だったのだろうかと僕は思う。でも、言うまでもなく、人殺しが正しいことであるはずがなかった。そして、僕は心のどこかで、ルカの望みを叶えるために彼女を殺したわけではないということに気づいていた。そして、そう考えることは余りに恐ろしく、僕はそれ以上考えないで済むように、バスルームを出るとルカの部屋にあった焼酎をストレートで多量に飲んだ。

そして酔った頭で、ルカは眠っているだけだから大丈夫と言い聞かせるようにして、彼女が死んでいるという事実を匂わせるようなもの、例えば血のついたシーツを洗濯機に放り込み、新しいものに変えたり、彼女の手首が見えないように包帯を巻きつけたりして、その痕跡を消した。そして明かりを消し、ルカの隣にもぐりこんだ。彼女の首やあごの辺りが徐々に硬くなっていくのが分かった。死後硬直が始まっているのだ。僕はその固くなった辺りに触れながら、目を閉じて眠った。


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