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『武骨くんと鎖骨ちゃん』
【フェチ/マニア 官能小説】

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『武骨くんと鎖骨ちゃん』-4

お待ちかねの宴会が、宿の大広間で始まった。
このサークルの合宿は毎年のことなので、いくつか注意を与えるだけで、宿の人は、皆引っ込んでしまった。
畳敷きの広間に、ビールやツマミが広げられ、乾杯の音頭、慣例の一気コール、更に、恒例のOBによる長〜いお説教…

ある程度落ち着いてくると、あちこちで小さなまとまりができ始めた。
タバコ組は、外でまったりと。
一年生は、まだまだ、はしゃいでいる。
早々に潰されて眠り込む者。
酒がまわって熱い論戦を交わすグループ。

なかでも華やいでいるのが、サナを中心とした一帯だ。

「やぁだぁ、せんぱいったらぁ!」

もはや、酔っ払って言葉がひらがなでしか出てこないサナの、ひときわ大きく響いた例の笑い声に、李湖は目を向けた。

…あれ、珍しい。

その輪に、洸太郎がいるのだ。
あまり騒ぐなかにいるイメージが無かったからだ。
李湖は、熱く試合について語る一団の中にいたが、思わずそちらに耳を傾けてしまった。

「え〜、サナちゃぁん、マネージャーなんだからさぁ、治療してくれよぉ、オレのヒザ〜」

「だぁって、もうあたひ、ふらふらだから、むりれすよぅ〜」

どうやら、今更昼間の傷が痛むヤツがいるらしい。
ソイツはサナがいいだろうが、…仕方無い、と思いつつ腰を上げかけた李湖の耳に、低い声が届いた。

「俺がやりますよ、先輩」

洸太郎の声だった。
そして、横目で気にする李湖の目にも鮮やかに、器用に消毒・ガーゼ・包帯、と済ませてしまったのだった。

…―わぁお、早い。

李湖は、心の中で完敗、と両手を上げてから、目の前の熱い会話に戻っていった。


それからしばらく後。
どうやらトイレから戻ってきたらしいサナが、李湖を部屋の隅に引っ張っていった。

「りーこちゃんっ。
こいばな、しーよお!
りーこちゃーんのー、ターイプはぁー?」

節を付けて絡んでくるサナに、答えないと解放されない気がして、素直に口を開いた李湖だった。

「んー、タイプか…
そうだなぁ、話してて楽しい人、かなー。
苦手なのは、茶髪!」

「ふぇー、めずらすぃね、りこたん、ちゃぱつ、いや?
りこたんのかみ、くろいままでキレーだもんねぇー。

でもさでもさ、このまえ、みたよぉ?
おんなしガクブのさ、なんつったっけ、あの…チャラいヤツ!
なか、よさげ、じゃないですかぁ〜」

「や、やだぁ、あのホストっぽいコでしょ?
違うよぉ、そんなんじゃないったら!」

「またまたぁ!
ほっぺた、あかくなっ・ちゃっ・て!」

「んもー、違うったらぁ。
…私、チャラい人無理だもん」

もちろん、洸太郎はこの会話に聞き耳を立てていた。
…途中までは。
口数の少ない自分にまずガックリとし、茶髪、と聞いて頭をかかえ、赤くなった李湖を見て、立ち上がり、トイレへ逃げ込んでしまったのだ。
だから、洸太郎は李湖の最後の一言を聞き逃してしまった。

…―くそっ、橋島のやつ、ツンデレかよっ。

李湖について、大いなる勘違いをしたままに。


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