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狼さんも気をつけて?
【幼馴染 官能小説】

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狼さんも気をつけて?-6

***


 気が付くと、明は霧に包まれた場所にいた。
 太陽は見えないが、切れかかった蛍光灯のような明かりが周囲を照らしている。
 しばらくすると、霧の中にオブジェクトが浮かび上がる。
 最初に見えたのは校舎と体育館だった。そのせいで明はここをグラウンドと推測する。
 すると、今度は高跳び用具一式が現れ、さらにベンチ、やかんにコップ、使いにくいタオルの束まで現れる。しかも、いつの間にか寝巻きまでユニフォームに替わっていた。
 情景こそいつも通りだが、想像の後追いで浮かび上がる世界に違和感を覚える。
(これって……夢? ……にしても俺一人? まぁ、せっかくだから練習でもするか)
 夢の中で練習をすることに意味があるのかは疑問だが、イメージトレーニングの一環と思えばあながち無駄でもない。ひとまず身体を温めようと、ストレッチを始める。
 モヤモヤした地面に座り、開脚する。息を長く吸いながら、ゆっくりと前のめりになる。
(一、二……、三、四……、い、イチチッ!)
 普段どおりにしたはずなのに、足が引きつるぐらいの痛みが生まれる。
(まさか昼間のストレッチのせい? やけにリアルな夢だな)
 あまり痛みを伴うのは逆効果と判断し、軽めの調整だけ行うことにする。
 バーを低めに設定して、マーカーを設置。もっとも、この霧の中では見えそうも無い。仕方なく踏み切り手前まで何度も往復し、距離感とタイミングを掴む。
 いざ跳ぼうとして、彼はふとあることを思いつく。夢の中なら人狼の性質は抑えられるのではないかと。これまで練習こそ拒否したものの、先輩達の跳躍を見てきたのだ。そして人狼としての身体能力を持ってすれば、真似をするくらい容易いこと。
 頭の中で甲高い笛の合図を再生する。弧を描きながら走り、利き足で大地を蹴る。
 視線と並行にあるバーが見えなくなると、代わりに空が見えた。太陽はなく、月のような薄ぼんやりとした光。それを見つめたら、途端に不快感を覚える。
 高い身体能力のツケがここで出る。明は空中で身を捩ると、四脚を伸ばして着地する。まるで放り投げられた猫のような反応に、彼はがっくりと肩を落とす。
(やはりダメだ……、何かいい方法無いかな?)
「明、だらしないぞ! もっとしゃきっとしろ」
 こんなときは決まって夢の凛とした声が響くのだ。ついでにファンシーなタオルも。
「……そうは言われても、こればっかりはって……夢!」
 視覚の端で嬉しいレンガ色を捉えると、それが誰かを確認する間もなく駆け出していた。
「きゅう……ん! あ、明……、ん、ちょっ、苦しい……てば!」
 突然の抱擁にじたばたともがく夢だが、明は気にすることなく頬ずりする。
「夢の中で逢えるなんて嬉しすぎ。マジ夢みたい……って、夢か。でも嬉しい!」
 寝る前の決意はなんだったのかと自分自身呆れるが、オヤスミと一緒に愛を捧げる相手だと、理性も正しく働かないらしい。
「んもう、はーなーしーて、苦しいもん」
「あ、ああ、ゴメン。だけど、少しくらいいいだろ?」
 彼女を抱く力こそ弱めたものの、腕は夢を抱いたまま。一方、彼女はきょろきょろと周囲を見た後、夢は「ふむふむ」と一人納得する。
「……ね、やっぱり今日のこと、気にしてたんでしょう?」
「うん? ああ、えっと、うん。……でもいい。こうして夢の中で夢に逢えたし……」
「夢で逢えたら満足なの?」
「夢じゃなかったらこんなこと出来ないよ」
(正直な話、もし現実でこんなことをしたら、抱きしめるだけじゃすまないと思うし)
「んー……そっか……」
 夢は明にもたれかかると、腕をそっと掴む。
「うん、夢と一緒にずっと……イッ! イタ、いだだ、痛いってば!」
 ――こうしてたい。そう続けようとしたところで、腕に鋭い痛みを覚える。
 毛深い腕を引掻いたのは夢の爪。マネージャーの仕事をしつつも年頃の女子、暇をみつけては入念にお手入れをしているらしく、その鋭さは半端ではない。しかも、ねじるものだから痛みは倍加され、せっかくの春色の時間が一転して、冬一色に染まる。
 赤く線の引かれた腕にふうふうと息を吹きかける明を尻目に、夢は腕を組み仁王立ち。


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