投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

狼さんも気をつけて?
【幼馴染 官能小説】

狼さんも気をつけて?の最初へ 狼さんも気をつけて? 6 狼さんも気をつけて? 8 狼さんも気をつけて?の最後へ

狼さんも気をつけて?-7

「明のい・く・じ・な・しーッ!」
 絶叫の原因が分からない明だが、怒りに見えるその顔に、どこか笑顔を我慢しているような歪みを見つけてしまい、心のどこかにくすぐったさを覚えてしまう。
「……夢、もしかして照れてる?」
 すると今度は耳にバチーンと小気味の良い音が響き、頬に目が覚めそうな衝撃が走る。
「バカ! なんで夢が照れるのよ! 明なんて知らないもん!」
 そう言うと夢は踵を返し、体育館の方へ歩き出す。
「どうしたのさ夢、いきなり怒り出して。悪いこと言ったなら謝るよ」
「ついてこない!」
 慌てて追いすがるも取り付く島が無い。頭を捻ったところで浮かぶのは疑問符ばかり。人の心というのはかくも玉虫色。もしくは、秋の空よろしく移ろい易いものなのかもしれないと、一人悟りをひらかんとする明だった。
「こーらーッ! なんで追いかけないのッ!」
 体育館の方から怒声が飛んでくる。見るといつの魔に移動したのか、入り口の前で夢がピョンピョンと飛び跳ねていた。
「ついてくるなって言ったのはそっちだろー!」
 つい、いつもの調子で言い返してしまうが、本当はすぐにでも追いかけたい。
「こういう時は追いかけるのが男の役目でしょ! さっさと来なさーい!」
 そう言うと夢は乱暴に扉を閉め、奥に消えた。


***


 体育館内部にも霧が立ち込めていた。周りを見渡せば、バスケットゴールや壇上などが再現されているのだが、床や壁の傷など細部を見ようとすると、途端にぼやけてしまう。
「夢、どこ行った?」
 さすがに返事はない。これが現実なら匂いを追うだけの話だが、薄ボケた世界にそれを求めるのは無理な話……のはずが、嗅覚がケミカルなアロエの香りを捉える。
 それは、先ほど夢を抱きしめた時、耳を隠す髪から香ったものと同じだった。
(この夢、なんか変だ。細部は全然ぼやけてるのに、匂いとか変にはっきりしてる)
 疑問を抱きつつも、今は夢を追うことが先決であると頭を切り替える。
 残り香が導く先は体育館倉庫。おそらく扉の影で待ち伏せているらしく、中途半端に開いた扉から、影がちらちらと見え隠れしていた。
「夢、ここかー?」
 しかし、相手は夢。警戒する要素がない。明は扉を開けると、ずかずか乗り込んで行く。
「えーい! 覚悟ー!」
 部屋の中央に出たところで、背後から夢が襲いかかって来た。しかし、ある程度予想していた明は、振り向くことなく身をかわす。
「おわっと、ととと……」
 一方、思惑の外れた刺客は目標の消失に足をもつれさせ、勢い余って倉庫の奥の方まで行き、棚に頭をぶつけることでようやく止まる。
「いたたたた……。んもー、明ったらずるい。普通は避けないで受け止めるもんでしょ? いい、男っていうのは、どんなときでも女を受け止めるもので……」
 暴漢は自らの狼藉を棚に上げ、自分に都合の良い男女のあり方をとうとう説く。
 話半分に耳を傾ける明だったが、ピクリと耳をそばだてると、急に真面目な顔つきになり、夢をマットに押し倒す。
「やぁん……もう、今日はずっと強引……って、え、あれ? なに? きゃー……ッ!」
 先程の衝撃が今更になって騒ぎ始め、棚の上のガラクタを引き連れ、雪崩のごとく崩れ始めたのだ。
 使い古されたバスケットシューズに卓球のラケット、クラブにリボン、さらには無造作に積まれていた大小のネットが、投網のように降りかかる。
 埃がぶわっと舞い上がり、視界が覆われ、ついでに呼吸も困難になる。
 そんな状況にも関わらず、明の鋭敏な嗅覚はカビ臭さに紛れる甘酸っぱい芳香をしっかりと分別し、再び脳内のサクラを満開にさせてしまう。


狼さんも気をつけて?の最初へ 狼さんも気をつけて? 6 狼さんも気をつけて? 8 狼さんも気をつけて?の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前