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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第二十四話-1

第二十四話 雪ノ下祭り―其の六―

「どうしたんですか。」

周りの人達が取り囲んでいる間に私は割って入った。

草士さんに駆け寄ると、彼はハッと我に返ったというように、私を見つめた。
ヒロタカは地面に座り込んだまま、顔を此方に向けている。
私がヒロタカの方を見ると目があった。
その途端、ヒロタカが小さく悲鳴をあげて、
よろよろと後ずさり、走って行ってしまった。
何があったか理解が出来ずに草士さんの方を向くと、
困ったような、怒ったような、でも泣きそうな顔で私を見た。

「あの…何があったんですか。」

私は恐る恐る聞いてみる。
草士さんは無言で私をただ見つめるだけだ。

くるくるくるくる……

気がつくと私のお腹が鳴っていた。
こんな深刻な場面でも鳴るなんて、本当にタイミングが悪い。
私は自分の頬が真っ赤になっていくのを感じた。

「あの…お弁当、お華さんから頂いてきました。
私、さっき長次郎さんにおにぎりもらったのにもうお腹空いちゃったみたいで…。
本当、食い意地はっててすみません。」

何とかこの重い空気を脱する為に、私はぎこちなく照れ笑いを浮かべた。
そういう意味ではタイミングは良かったのかもしれないとプラスに考えて、
草士さんにお弁当を渡そうと紙袋に手を入れた。

その瞬間、手首を掴まれ、強く引き寄せられる。
何が起こったのかわからないまま、気がつくと彼の腕の中にぎこちなく納まっていた。
でもそれは一瞬で、抱きしめられたと思ったら、手を引かれて歩かされていた。
草士さんは無言のまま、私の手を引っ張りながら歩いていく。
急展開すぎて全然ついていけない。
私の手を掴む彼の手の力が強くて手首が少し痛い。

「あの、草士さん。痛いです。」

私が声を少しはると突然早足で歩いていた足が止まった。

「…すんません。大丈夫ですか。」

彼は私の方を向きなおして掴んでいた手をほどいた。
いつもと様子が違うが、さっきよりは落ち着いているようなので少し安心した。
捕まれていた手首をほどかれる。
草士さんのこの細い腕の何処にそんな力があるのか不思議に思う。

「私は大丈夫です。草士さんこそ、大丈夫ですか。」

恐る恐る聞くと彼が勢い良く頭を下げた。

「ほんっっっと、すんません。」

頭が地面につくのではないかと言うくらい頭を下げて草士さんは謝る。
商店街からかなり歩いたので人はあまりいないが、通りがかりの人たちが何事か
とこちらを伺っている。

「そんな、大丈夫ですよ。顔上げてください。」

私が慌てていると、彼は暫く頭を下げたままでいた後、ゆっくり体勢を元に戻し
た。
顔をあげるといつもの草士さんの表情に戻っていてほっとする。


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