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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第二十参話-2

「長次郎さん、そろそろお神輿見に行く時間じゃないかしら。坂本さ…じゃなく
てリョウコさん、もし良かったら長次郎さんと一緒に神社の方まで行ってくれな
いかしら。あと悪いんだけど、町内会の会長さんたちのお弁当も持って行ってほ
しいの。」

そう言うとお華さんは紙袋を渡してくれた。中には袋が二つあり、
一つにはお弁当が4つ入っている。もう一つには6つ入っていて、こっちが町内
会長さん達の分だ。
4つは多いので返そうとすると、お華さんは小さいので余ったら後でお腹が空い
た時にでも食べてと言ってくれた。

「…あの、おいくらですか?」

そう言ってバッグからお財布を出そうとして気がついた。
お財布も携帯もバッグも藤本書店に忘れてきてしまったのだ。
自分が着物である事をすっかり忘れて、無一文で、しかも携帯まで忘れてきてし
まうなんて何だか落ち着かない。
どうしようか迷っているとお華さんが微笑んだ。

「あら、お代なんて良いのよ。それより長次郎さんの事、よろしくお願いします
ね。長次郎さん、病み上がりなんだから、あまり張り切らないで下さいよ。」

お華さんはいたずらっぽく長次郎さんに笑った。

「わかったわかった。今日は担がないで町内会長達の席にでも座って見ることに
するよ」

そう言うと、長次郎さんが食べていたお弁当箱に、蓋をした。

「本当にありがとうございます。神社の近くに草士さんもいると思うのでお弁当
、草士さんと町内会の方達に渡しますね。」

私がそう言うと、お華さんは草士さんによろしくと言って微笑んだ。
長次郎さんは紙袋を持つと言ってくれたが、病み上がりだから無理しちゃいけま
せんよと言うと、かっかっと笑い、ではお言葉に甘えて。と紙袋を持つのを私に任せてくれた。

歩きながら、長次郎さんはお囃子を口ずさんだり、ちょっと足でリズムを取った
りと終始ご機嫌で、私も楽しくなってくる。
長次郎さんは商店街をまとめていた事があると草士さんが言っていただけあって
、さっきの草士さんみたいに歩くたびに声をかけられている。

「おっ!長次郎、来たね!」

突然ひときわ大きな声で声をかけられる。
前の方から大きくて体格の良いお爺さんが歩いてくる。
法被を着て、御輿を担いできたばかりの様で汗を少しかいている。

「あぁ、洋七。元気にしとったか。」

長次郎さんが驚きながらも喜んでいる。
洋七と呼ばれたお爺さんは顔をくしゃくしゃにして笑いながら、
当たり前よ、と長次郎さんの肩を軽く叩いた。

「あ、隣のお嬢さんはさっき草士と歩いてたべっぴんさんじゃないか。」

洋七さんが私を見て大声で言う。


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