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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第二十参話-1

第二十参話 雪ノ下祭―其の伍―

出店の並んでいる通りに出ると思った以上にお店が連なっている。

きゅるるるる…

お腹が大きな音をたてる。
幸い、雑踏のおかげで誰にも気づかれずにすんだようだ。
どこで買おうか迷っていると出店の奥の方にお華さんと長次郎さんの姿が見えた。
私は二人のいる方へ歩いていく。

「長次郎さん、お華さん、さっきはありがとうございました。」

私が二人に頭を下げるとお華さんが手を横に振って笑う。

「あら、良いのよ、坂本さん。それよりお昼は食べたかしら。うちのお弁当、美
味しいわよ。」

出店の奥の方で、従業員らしき人たちがお弁当を出して、台の上に忙しなく並べ
ているのが見えた。

「坂本さんじゃなくて、リョウコで大丈夫です。今ちょうどお昼を買いに来たと
ころなんです。お弁当、すごく美味しそうですね。」

お惣菜とおにぎりが小さな箱に詰められている。
おにぎりはお華さん特製の十穀米と小梅を混ぜたおにぎりだそうだ。
お惣菜はいろいろあって組み合わせられるようになっている。

「リョウコさん、草士のやつは何処に行ったかな。」

長次郎さんがおにぎりを頬張りながら不思議そうな顔で私を見つめた。

「さっき共通の知り合いに会って、今お話し中です。その間に私がお昼を買いに
来ました。」

「全く、女性を一人で来させるなんて…、すいませんね、リョウコさん。」

長次郎さんが少し困った顔になる。
その顔が草士さんと良く似ていて笑いそうになる。

「いえいえ、私がお腹が空いて勝手に抜けてきただけですから…」

きゅるるるるるる…

そこまで言うとまた腹の虫がなり始めた。
私のお腹は本当にタイミングが変に良すぎて恥ずかしい。
長次郎さんは少し驚いた顔をした後、にかっと笑った。

「お食べなさい。今日は朝から雨に降られて大変だったから、お腹も空いたでし
ょうに。」

そう言うと自分のお弁当からおにぎりを私に差し出した。
受け取らないのも悪い気がして一つ頂く事にした。

小梅がカリカリと酸っぱくて、空腹の胃にきゅーっと染み込んでいく。
十穀米は白米と違って、食べ応えがあって、ゆっくり噛むと口に甘いお米の味と
、梅干が広がってきて、とても美味しかった。
見た目よりもおにぎりはボリュームがあって、とりあえずお腹を鳴らさずに
すみそうなくらいまで満たされた。

「…なんか、今日は色々すみません。」

「何も謝られる事はしていませんよ。
今日はリョウコさんに会えて私はとても楽しいんですよ。」

長次郎さんは穏やかに微笑む。


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