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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-41

「で、そのことだけじゃないんだろ?」
 わざわざ個別に話しをするのなら、お互いに聞き知っていることを話題にする必要はない。悠は彼女を促す。
「はい。まずはごめんなさい」
「? なんで?」
「私、先輩のことを利用していました」
「利用? なにが?」
「部室へ侵入のことですよ」
「いや、利用というか、協力じゃないの?」
 あの時の悠は美琴のことで頭が一杯だった。むしろ、牧夫が悪であった事実を教えてくれた和子には感謝したいぐらい。そのおかげで憎き恋敵を美琴から離すどころか、社会から隔離できるのだから。
 しかし、和子は目を伏せたまま。何かしら罪悪感からか、声の調子も低かった。
「私、正直、美琴さんのことなんてどうでもいいんです。今は彼女がやられてるんだろうなっていう程度でしたし、助けるなんて思っていませんでした」
「いや、それは、でも……」
「それに、忍び込んだ時だって、私は真っ先に自分のファイルを探してました。自分のは削除して、他人のファイルを複製してファイル名を書き換えるみたいな、せこい偽装してましたし。結局はバックアップのせいで無駄だったみたいですけど……」
 あのとき手間取っていたのは、その操作のせいだろう。悠の中でも、ようやく違和感が薄れていく。
「バチっていうんですかね? 自分のことだけ考えたら、牧夫に見つかって、弘樹君にも教えるはめになって……」
「悪いのは牧夫だろ?」
「ですけど、自分だけ助かろうとしたことが良くないんです。多分、もしばれなかったら、先輩と美琴さんのことなんて気にしなかったと思います。でも、弘樹君を失いたくないって思って、だから、真実を話しました」
「そっか……。それで、ああなったわけか……」
「弘樹君、私のこと抱きしめてくれました。私が汚いって言っても、そんなことないって、和子ちゃんは俺の大切な子だって……、いったいどこがいいんでしょうね? 私なんて……」
 和子はふふっと笑うと、袴についたほこりを払い、立ち上がる。
「さあてと、嫉妬深い彼氏が不安になる前に戻りましょうか」
「ん? ああ……、そうだな」
「一緒に戻って大丈夫ですかね?」
「弘樹を信じろ」
「はい!」
 笑顔で笑う和子に、悠はふと、この顔に惚れたのかもと後輩の胸中を推理していた……。

**――**

 美琴の家庭教師は、例の事件が発覚したあと、強引に契約を解除させた。
 恵子は突然の心変わりに反対したが、美琴の「悠と一緒に塾に行くから」という言葉ににやりと笑ったあと、頷いた。
 今はカーテンの閉められた窓と、ブラインドの下りた窓が向かいあうだけ。
 それでも、朝夕に出会う二人は、笑顔で挨拶をしていた。

 十一月の第二土曜日のことだった。
 午後八時、悠は久しぶりに美琴の部屋に招かれた。
 遅い時間にも関わらず、階下は明かりが無く、よくよく聞いてみると両親が不在だといわれた。
 彼女いわく、「ぴちぴち女子高生を一人きりにするのは危険だから、今すぐ来い」とのことだった。
 ばかばかしいと思いつつ、あの事件からどこか会いづらい悠には非常に嬉しい誘いであった。
 ドアを開けると、ピンクのエプロンを羽織る美琴が現れる。
「悠、ごはん食べた?」
「いや? まだだけど……」
「それじゃあさ、今から用意するから、私の部屋で待ってて……」
 そういってまたパタパタと台所へかけていく彼女の後をついていく。
「別にそんな、台所で待つ……さって……」
 台所はどうすればこんなに汚せるのかというほどに散らかっていた。
 コンロの上では揚げ物をしているらしく、ばちばちっと水が跳ね、そのたびに美琴は「うわ、きゃあ」と右往左往する。
 料理というよりは工作というほうが正しい彼女の作品は、やけに衣が厚く、狐色どころか狸色がお似合いになっている。
「失敗してるところ見られるの恥ずかしいから、二階に行ってて……」
「はいはい……」
 プライドの高い彼女ならきっとそういうのもあるだろうと、悠は素直に言うことを聞く。
 今日の夕飯はどうせカップラーメン。そう思いながら……。



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