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死神のイメージ
【ファンタジー 恋愛小説】

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死神のイメージ-5

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「おはようございます、奈緒」



マンションの駐輪場まで掛け降りていくと、飾り気の無いシルバーのママチャリが停めてあるのを見つけた。
警察官の敬礼の様なポーズを取って満面の笑顔になる、ブレザー姿の彼。

「おはよう。相変わらず爽やか過ぎて嘘臭い笑顔だね、尚志くん」
「奈緒は今日も相変わらず朝から奈緒らしさが満ち溢れていますね」

毎朝欠かさずにやる挨拶と、軽い冗談の様な会話を済ませて、尚志くんのママチャリに跨った。
近くで見ると細かい傷や部品の汚れ、傷みはあるけど、いつもぴかぴかの自転車。
毎朝私を乗せるから汚したくないので、毎晩綺麗に磨いていると言っていた。

「では参りましょうか、尚志くん」
「参りましょうか、奈緒。アクセル!」

尚志くんは自慢の愛車のハンドルを握り、前の方に捻って、悪戯っぽく私に微笑む。
つっこんでもらうのを待つ様子は、善いことをして褒めてもらうのを待つ子供みたいだった。
まだ付き合う前は、こんな幼稚な一面があるなんて・・・想像もできなかったっけ。

「早く免許とりなさーい」

がら空きの額目がけて、触れるだけの手刀を振り下ろした。

「いつもと突っ込みの内容が違うじゃないですか」
「だって乗りたいんだもん、バイク。早くツーリングしようよ」
「嫌ですね。バイクじゃなくて自転車だからアクセル無いよ、とつっこんでくれなくては」

言葉遣いは丁寧なくせして、下唇を突き出す仕草は私と同じ歳に見える。

「行きましょうか、奈緒。
こら、少しは痩せなさい、車体が軋んでいますよ。あまり僕の愛車に負担をかけるのはやめなさい」

それを言ったらどんな目に遭わせるか何回も言ったはずだよね。
体に痣で作った刺青を入れたくなったらいつでも言えって、言ったはずだよ。

「あっごめーん手が滑っちゃった、ああまだ滑るまだ滑る」
「痛いです!やめなさい、人間の耳は急所なんですよ!引っ張ったら千切れてしまいます!」
「死神じゃなかったのかな。いつも自分を人間と間違えるね」
「やめてくださ〜い!運転できませんよ〜!」

お洒落に目覚めたからわざわざお願いしたんだ。
尚志くんは意外とお茶目なんだし、お洒落ももっと遊んでみようよ。


まだ秋とはいえ吹いてくる風がひんやりとしている。
私は、前でペダルを漕ぐ尚志くんが盾になるから、そんなに寒くはないけど・・・

「ねえ尚志くん、寒くない?」

・・・返事が無い。
それだけならまだしも、こちらを振り向きもしない。こら、ちゃんと答えなさい。


「寒いです。だから、あっためて欲しいです・・・」


速度を落とし、私に唇を見せてとんとんと叩いて催促してきた。
・・・この、阿呆神。死神じゃなくて阿呆神、もしくはエロ神って呼ぶぞ。

「しょうがないなぁ。動かないでよ・・・////」


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