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若芽の滴
【鬼畜 官能小説】

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若芽の滴-2

(ち…ちち…痴漢!?)


汐里の表情は硬直した……いつもなら、男子生徒に悪戯をされたなら、安易く悲鳴を上げていた筈なのに、全身が石のように固まり、悲鳴どころか声すら出せない……痴漢行為を働く変質者が、自分のすぐ傍に居る事の恐怖に、少女の体は竦み上がっていた。


(!!!……う、嘘!?)


尻を撫でる手は、一つ、また一つと増えていった……と、カーブに差し掛かった電車は大きく揺れ、同時に卑劣な手も離れた。


(た、助けて!!)


心の中で叫びながら、汐里は渾身の力で人波を掻き分け、ドアの近くの壁に背を付け、そのまま立ち尽くした。


(誰?…誰が痴漢なのよ……?……早く駅に着いて!お願い!!)


顔を赤く染め、涙を浮かべた少女に、車内の誰もが素知らぬふりをし、何事も無かったように電車は進んでいく。
汐里の生まれ育った街でなら、こんな事は無かった。
誰かが泣いていれば、必ず誰かが力になってくれていた。
こんな、人を人とも思わぬラッシュも、ましてや痴漢などもいなかった……涙が革靴で弾け、鞄を持つ手がブルブルと震えた……傷付いた少女を乗せた電車は、駅を五つ程通過し、その少女は涙を拭きながら目的の駅に下りた。


『なかなかイイ獲物見つけたな』

『ああ、アイツ、身体が細いクセに、結構ケツがデカかったぞ』

『声も出せないくらいに、ガチガチに固まってたな。“ああゆうの”はヤリやすいな』


痴漢達は、汐里の下りた次の駅で下り、今日見つけた美少女の話で盛り上がっていた。
駅を出て右側に、自動販売機が並んでおり、その周りに十数人程がたむろしていた。


『アレさ、桑名汐里って奴に似てたな』

『へぇ、売れないアイドルか?』

『は?知らないの?結構売れてんだぞ』


桑名汐里というアイドルを、知っていたのは一人だけでは無かった。
だが、本人だと気付いた者は一人もいない。が、それはさしたる意味はなかった。
あの美少女の《魅力》は、痴漢達を魅了するには充分だった。


『あの電車に乗るのは分かったんだ。もう逃がさねえよ』

『あの駅で下りるって事は、高校も大体分かったなあ……』


不気味な笑みを浮かべて、痴漢達は、別の獲物も探しながら、電車に乗り込んでいった。


(どうしよう……今日も痴漢に会ったら……)


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