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『Scars 上』
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『Scars 上』-35

「ポリ公なんて気にすることないって」
主戦場が南東エリアに固定したことで、暇になったエリア担当の子が笑いながら言う。
「そうそう。ウチらにビビってるだけよー」
桜花の連中は基本的に警察を舐めている。
まあ、今更逮捕歴の一つや二つ増えたところで全く気にしない連中だからな。
能天気な女子達の会話を聞きながら、俺はため息をつく。
……とはいえ、警察の沈黙は不気味だ。
一体、何が起きている?
頭を高速で回転させて、考えうる可能性を模索していた。
その時。
「ほかのトコで喧嘩してたBMTの数がどんどん減ってるみたい!」
カラオケルームの一番端に座っていた女の子が、立ち上がって報告する。
数が減っていく? 
移動しているってことか。
「ヴィヴィオの前に、テキがすっごいたくさん集まってるらしいです」
その報告に思わずニワトリの方を見た。
ニワトリも緊張した面持ちで、こちらを見つめ返している。
霧浜ヴィヴィオ。
霧浜駅からわずかに反れた場所にある私鉄が経営する若者向けのファッションデパート。
そのエントランスに面した一体は広い広場になっていて、日ごろはBMTの格好のたまり場になっている。
以前、ニワトリと一緒に搾り出したBMTの本拠地候補。
北東部の湾岸に面した霧浜工場地区、ショッピングモールの地下に広がる広大な駐車場、取り壊しの決まったまま放置された霧浜シネマ跡、霧浜駅東口公園、そして、霧浜ヴィヴィオ。
「水瀬サン、ビンゴっスよ!」
激戦区となっている南東エリアに大攻勢をかけるために、全勢力を集結させたのか。
ならば、集結させた人物がいる。
すなわち、BMTのリーダー。
「王手をかけるか」
すぐに待機しているレイとユウジに連絡を――。
刹那。
何かが脳裏を掠めた。
待て。
何かがおかしい。
今まで散々身を隠していたんだ、ヤツは。
それがこんな時に出てくるか?
いや、BMTにとっては今がチャンスなんだ。
臆病なヤツは、周りを大勢で固めて――。
いや、違う。
「マツリ、敵の数が減ったっていう報告を受けたポイントをマーキングしていってくれ」
「ええとね……」
マツリが今や真っ赤な文字で埋まった白地図に星のマークを書き込んでいく。
ラブホ街、山下橋、テキサスバーガー前、染谷の陸橋、駅前ロータリー、マリン横丁……。
「こんな感じかな」
星のマークの書き足された地図を見て、俺は戦慄した。
「スカイタワー前のエリアだけは、移動してない……」
すなわち、ヴィヴィオは囮。
……なかなか、キレるじゃないか。
俺は、すぐに携帯を取り出した。


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