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いけないあそび
【同性愛♂ 官能小説】

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いけないあそび-3

二、つきまとわれて

志久野昌とは一級友、という仲だった。
特に親しくもなければ仲が悪いというわけでもない。
出席番号は近くないが、先日席替えしたせいで今の席は志久野の真後ろだった。
そんな志久野に抱くイメージもこれといって特になかった。
勉強も運動も並で、誰とでも気さくに話す。
私立駆保男子高等学校二年ロ組の、至って普通の生徒。それが灰田の志久野に対する印象だ。
それが、あれを機に180度変わってしまった。

「ヒデ、それ一口もらうな」
昼休み。志久野を含めた近くの席の級友と購買のパンや弁当を食う。
「お、おい」
断りもせずに、志久野は灰田のパックジュースを口にして彼に返した。
ぺろりと唇を舐めにやりと笑う志久野を忌々しげに睨み付けるが、他の級友の手前、下手なことは言えない。
「ハイダ、一口くらい許してやれよ」
志久野の右隣の角田(カクタ)が笑いながら言い、カレーパンを齧った。
「………」
灰田は仏頂面でジャム付きのコッペパンをちぎって口に運ぶ。
その様子を見つめ、志久野は肩を竦めた。
「一口もやれないほど、好きだったのか」
その言葉にどっと笑う、級友達。
灰田の機嫌が悪いのは、単にこのパックジュースを飲まれたからでなく、間接キスになるのが厭だからと分かっているくせに、志久野は意地悪く呆れたように再び肩を竦めた。
人の気も知らないで、と灰田は口の中だけで呟く。
そんな彼の耳をぐいと引っ張り、志久野は耳元で声を潜めた。
「いっ!?」
「そんな態度、逆に怪しまれるぞ」
他には聞こえないくらいの小さな声で。
志久野は灰田の耳を解放すると、にやにやと笑っていた。
「何だ?」
「あとでカクタが同じジュース奢ってやるから機嫌直せって言ったんだよ」
その言葉に、角田は志久野の頭を軽く引っ叩いた。
(人の気も知らないで)
灰田は再び心の中で呟き、パックジュースのストローに口を付けたのだった。


「見ーつけた」
「……シクヤ」
うんざりした様子で、灰田はその男の顔を見上げた。
やおら起き上がり、灰田は苦々しい表情で吐き捨てる。
「失せろ。この間のこと、俺は許さないからな」
「許さない? 何を? お前のチ×コ握ったこと?」
志久野が皆まで言うより早く、灰田は彼の胸倉を掴んで壁に押し付けた。
衝撃で、レール式の本棚がぐらりと揺れる。
「それとも、俺達のセックス見て思わず勃っちまったことがバレたから、当たってるだけ?」
「て……め」
憤怒に塗れた灰田の顔に、志久野が指を伸ばした。
「図星か。可愛いねぇ、ヒデ」
「馴れ馴れしく名前で呼ぶな!」
忌々しげに言い、灰田は志久野の手を払いのけた。
志久野は行き場を失くした手を唇に持って行き、静かに、と言った。
「声が大きい。書庫と違って、此処は他に人がいるんだぜ」
昼休みの図書館には、まばらではあるが読書や勉強に来ている生徒の姿が見えた。
軽く舌打ちし、灰田は黙り込む。
「なあ、ヒデ」
志久野がまたあのにやけた顔で灰田に言った。
「これ以上俺につきまとってほしくなかったら、放課後、ちょっと顔貸しなよ」


つきまとってほしくないのはやまやまだが、顔を貸せと言われて素直に貸すわけはない。
ホームルームの後、灰田は級友と話している志久野を他所に、こっそりと教室を抜け出した。


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